安倍晋三元首相(67)が奈良市で参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡した事件は、8日で発生から1カ月を迎えた。
「悩みを聞いてあげられれば、未来は変わったかもと思ってしまう」。山上徹也容疑者(41)の高校時代の同級生だった男性(42)は自問を続けている。
1カ月前の7月8日、安倍元首相の銃撃事件を伝えるニュースを見て言葉を失った。高校卒業後、疎遠になった山上容疑者の姿が映し出されていた。居ても立ってもいられず、現場へ献花に向かった。「ダンチョー、何があったんや」
男性は奈良県内有数の進学校として知られる公立高校に入り、親しいグループの中に山上容疑者がいた。山上容疑者は応援団に所属し、真夏も学ラン姿で部活に打ち込む姿が印象的だった。いつしか親しみを込めて「ダンチョー」と呼ばれるようになったという。
男性の記憶に残っている出来事がある。放課後、学校近くの駄菓子屋に行こうと誘った時、山上容疑者は「応援団に遅れるから」と断った。男性は「遅刻やルールを破ることが嫌いな性格で、超がつくほど真面目だった」と言う。
男性は事件後、山上容疑者の母親が「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に入信し、多額の献金をしていたことを知った。
山上容疑者はツイッターに「オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた」と投稿しており、高校時代は既に厳しい家庭環境の中で生活していたとみられる。「ダンチョーは学校でいつも笑っていて、悩みに気付いてあげることもできなかった」。男性はこう振り返る。
高校卒業後はやり取りすることはなくなったが、同級生たちと集まった会合で山上容疑者の近況を気に掛けたこともある。短期間で転職を繰り返し、事件直前には消費者金融から借金をして困窮していたという山上容疑者。男性は「卒業後も連絡を取り合う関係でいたら、何か力になってあげられたのではないか。悔しさが消えない」と語った。【安元久美子】