岸田首相、被爆体験者の医療費助成にがん追加表明 長崎原爆の日

米軍が長崎市に原爆を投下して77年の9日、同市の平和公園で平和祈念式典が開かれた。ロシアがウクライナを侵攻し核兵器の使用も示唆している状況を受け、田上富久市長は平和宣言で「核兵器をなくすことが未来を守るための唯一の現実的な道だ」と訴えた。首相就任後に初めて参列した岸田文雄首相は国が指定した援護区域外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」の救済にあいさつでは触れず、式典後、現在は精神疾患などに限定している医療費助成にがんの一部も加える方向で検討すると表明した。
田上市長は平和宣言で、長崎で被爆して下半身の自由を失った故・渡辺千恵子さんが「二度と私をつくらないで」と訴えた姿に触れ「どんなことがあっても核兵器を使ってはならない」と強調。核保有国や核の傘の下にある国が主張する核抑止論を批判した。
核保有国に対してはロシアのウクライナ侵攻を巡る対立を乗り越え、米ニューヨークで開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で核軍縮の具体的なプロセスを示すよう要請。日本政府には核兵器禁止条約に署名、批准し、唯一の被爆国として核なき世界への先導役を務めるよう求めた。
被爆体験者「小手先のまやかしだ」
田上市長は政府に被爆体験者の救済を急ぐことも求めた。岸田首相は式典後、被爆者団体との面会の場で被爆体験者の医療費助成にがんの一部を追加する考えを表明。しかし、被爆者健康手帳の交付を求めて長崎地裁で係争中の被爆体験者の原告団は、記者会見で「小手先のまやかしだ。被爆体験者を被爆者と認めない限り本質的な解決にはならない」と批判した。
今年の式典には米英中仏印とイスラエルの核保有6カ国など過去最多の83カ国が参列。ロシアとベラルーシは「不測の事態の回避」を理由に招待しなかった。新型コロナウイルス感染防止のため規模を半分以下に縮小し、別会場からモニターで見守った530人を含む2130人が出席した。式典ではこの1年間で死亡が確認された3160人の原爆死没者名簿が奉安され、奉安者累計は19万2310人になった。【高橋広之、中山敦貴】