まず、本記事の執筆時点(2022年8月6日)で、旧統一教会との関係を矮小化する主張は、筆者が整理したところ、7パターンあった。
①虚偽説明 (例)本当は関係があるのに「関係ない」と嘘をつく 等
②無知のふり (例)「旧統一教会の何が問題か分からない」/「被害に想像が及ばなかった」等
③過失を主張 (例)「共催イベントのため気づかずに出席した」等
④1度の過ちを主張 (例)「今回限りということでお受けした」等
⑤論点のすり替え (例)「手続きのプロセスには問題はなかった」/「組織的な関係があったわけではない」/「宗教の話は一切してない」/「お金のやり取りはない」/「政治に影響はない」等
⑥開き直り (例)「祝電の依頼があれば誰に対しても出す」/「機械的な対応で、意識的な対応ではない」/「イベント出席は形式的なもの」/「記憶にない」/「支援を受けても何も問題ない」等
⑦説明を拒否 (例)「個人の政治活動に関わる話なので、回答を控える」/「事務所に尋ねてほしい」/「昔の話なので分からない」/回答期限が過ぎても回答しない/コメントを全て拒否 等
①は関係していたことを嘘で否定しており、非常に悪質といえるだろう。
②はいわゆる「バカのふり」をしているわけだが、90年代初頭まではテレビで頻繁に旧統一教会問題が報じられていたことを考慮すると、現在40代以上の議員の場合かなり苦しい言い訳だ。
③~⑥は関係も問題も認識しているものの、あの手この手で責任を小さく見せようとしているといえる。
⑦は一切の説明を拒否することで、追及の材料すらも与えずに逃げ切ろうとしている。
それでは、該当する主張を行った主な政治家18人の実際の発言、旧統一教会との関係を順次、紹介していく。
(注 五十音順に記載。統一教会との関与は、TheHEADLINE「[追記]統一教会との関与が示された議員・知事ら121名一覧。新岸田内閣から首相経験者、現職議員まで」を参考に作成)
→パターン②「無知のふり」に該当(足立康史氏は現在56歳のため、統一教会の問題を知らないとは考えにくい)
→パターン⑤「論点のすり替え」に該当(政治と宗教の癒着の問題を「宗教弾圧」に飛躍させている上、共産党への敵対感情を煽っている)
【旧統一教会との関係】 ・2018年、関連団体・世界戦略総合研究所で講演
→パターン④「1度の過ちを主張」に該当
【旧統一教会との関係】 ・2022年春に関連団体・PeaceRoadひまわり主催イベントで講演
→パターン⑤「論点のすり替え」に該当(「世界日報」から宗教色を感じたかどうかにすり替えている)
【旧統一教会との関係】 ・2017年、旧統一教会と関係が深い「世界日報」元社長から10万円の寄付を受ける
→パターン⑥「開き直り」、⑦「説明を拒否」に該当
【旧統一教会との関係】 ・2006年4月、2010年4月に関連団体・世界平和女性連合のイベントに参加 ・2008年、自らの後援会「ともみ・越の会」を旧統一教会関係者が立ち上げ
→パターン⑤「論点のすり替え」に該当(金銭のやり取りの有無にすり替えている)
【旧統一教会との関係】 ・世界平和連合青年フォーラムのイベントに参加 ・旧統一教会の賛同会員であることを認める
→パターン①「虚偽説明」、⑤「論点のすり替え」に該当(組織的な付き合いの有無にすり替えている上、自民党は長年にわたって組織的付き合いがあったと明らかになったため虚偽説明でもある)
【旧統一教会との関係】 ・旧統一教会関係者が自らの選挙を応援
→パターン②「無知のふり」に該当(小林鷹之氏は現在47歳のため、統一教会の問題を知らないとは考えにくい)
【旧統一教会との関係】 ・同日の会見で祝電や地元会合で挨拶した事実は認める
→パターン①「虚偽説明」に該当
→パターン②「無知のふり」に該当(下村博文氏は現在68歳のため、統一教会の問題を知らないとは考えにくい)
【旧統一教会との関係】 ・2016年、旧統一教会と関係が深い「世界日報」から6万円の献金 ・2015年の名称変更に文科大臣として圧力をかけた疑いがあるも、8月3日までは否定 ・8月4日以降は一転して「今となれば責任は感じる」と名称変更に関わったことは暗に認める内容に変化 ・8月5日の野党合同ヒアリングで前川喜平氏(当時の文科審議官)が「下村さんの意思が働いたことは100%間違いない」と証言
→パターン⑤「論点のすり替え」に該当(手続きに問題があったかどうかにすり替え)
【旧統一教会との関係】 ・7月22日会見で統一教会のパーティー券購入の事実を認める
→パターン⑥「開き直り」に該当
【旧統一教会との関係】 ・2019年、国際勝共連合と関係が深い団体主催の会合で講演
→パターン⑤「論点のすり替え」に該当(手続きに問題があったかどうかにすり替え)
【旧統一教会との関係】 ・2016年、旧統一教会と関係が深い「世界日報」元社長から3万円の寄付を受ける ・2020年、「世界日報」に登場
→パターン③「過失を主張」に該当
【旧統一教会との関係】 ・同日の会見で祝電を送った事実も認める
→パターン⑦「説明を拒否」に該当
【旧統一教会との関係】 ・2016、2017、2019年に関連団体・UPF主催のピースロードイベントに参加 ・2022年にはピースロードの実行委員長を自ら務める
→パターン①「虚偽説明」、⑤「論点のすり替え」に該当(党が影響を受けたかにすり替えている上、勝共連合と自民党の改憲案が酷似しているなど多くの影響が既に確認できている)
→パターン②「無知のふり」に該当(福田達夫氏は現在55歳のため、統一教会の問題を知らないとは考えにくい)
【旧統一教会との関係】 ・現時点では不明
8月6日現在、旧統一教会との関係についてのコメントを確認できない
→パターン⑦「説明を拒否」に該当
【旧統一教会との関係】 ・自らの選対本部長を務める、親族の細田重雄島根県議が旧統一教会関連団体「島根県平和大使協議会」の議長を務めていた ・2019年10月に関連団体・UPFが名古屋市で主催したイベントに参加し、スピーチ
→パターン⑤「論点のすり替え」、⑦「説明を拒否」に該当
【旧統一教会との関係】 ・2011年11月に関連団体・国際勝共連合が後援するイベントに参加 ・2013年に関連団体・平和大使協議会に会費1万円を支払い
(注 8月10日に旧統一教会との接点を認めたと報じられた)
→パターン⑥「開き直り」に該当
【旧統一教会との関係】 ・同日の会見で祝電を2~3回送った事実は認める
→パターン①「虚偽説明」に該当
【旧統一教会との関係】 ・2001年11月、旧統一教会と関係が深い「世界日報」に選択的夫婦別姓に反対する国会議員としてインタビューが掲載 ・2004年、2010年の参院選で旧統一教会が選挙支援していたと有田芳生氏が8月3日にツイート
18人の発言は以上だ。
もはや読んでいる方が恥ずかしくなるような、みっともない言い訳のオンパレードであったが、追及する側としては、パターン⑦「説明を拒否」が最も厄介だと感じている。
一切コメントしないのだから、いわゆる「迷言」と呼ばれるようなテレビ受けするコメントが生まれることもなく、新たな追及の材料を与えることを防いでいる。
もちろん、説明責任を果たすべき国会議員としては、本来は言語道断な対応だが、安倍政権以降の自民党はこの方法で数多くの不祥事をごまかしてきた「成功体験」があり、残念ながら国民に不祥事を忘れさせるためには最も賢い一手となってしまっている。
今後も新たな関係が次々と発覚していく中で、該当者はさらに増えていくだろう。
次はどのようなアクロバティックな言い訳が飛び出すのか、それらの発言をメディアはしっかり引き出して追及できるのか。引き続き注視していきたい。
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(フリーランスライター 犬飼 淳)