牧草地を駆けるエゾシカ 白昼堂々 酪農家「飼ってないのに…」

北海道根室市郊外でエゾシカの雄の群れが我がもの顔で牧草地を駆け巡っている。春先に古い角を落とし、新しく生え変わった茶褐色の袋角が夏の緑に映える。
道東では狩猟期以外もほぼ1年中、有害駆除が行われている。このため、シカの警戒心がことさら強い。車を止めるや、群れは一斉に動きを止める。顔を正面に据え、耳をそばだてて警戒態勢を取る。そして、命を狙うハンターの車かどうかを見定める。
出産を終えた雌も、バンビを連れて牧草地に出没し始めた。シカの本来の主食はササ類。だが、牧草地で生まれた子鹿は牧草を食べて育ち、世代を重ねるごとに牧草が当たり前の主食になってしまった。特に狙われる牧草は、栄養価の高いアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)だ。
牧草は本来、酪農家が乳牛に与えるための餌。だが、バターのパッケージのように、乳牛がのんびりと草をはむ牧歌的な風景はめっきり減った。運動させると搾乳量が減るため、高分乳・大規模化の流れと連動するかのように、放牧を控える農家が増えたためだ。ある酪農家(49)は「夜中に盗み食いをしているうちは我慢していたが、いまや白昼堂々。エゾシカを飼っているわけではないのに」と苦虫をかむ。【本間浩昭】