東京五輪・パラリンピック組織委員会の元理事、高橋治之容疑者(78)が17日、受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。公職である組織委理事、スポーツビジネスに精通した民間事業家という「2つの顔」を持っていた高橋容疑者。特捜部は、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」側から渡った5100万円を組織委理事としての職務への賄賂と認定、立件に踏み切った。(吉原実、桑波田仰太、石原颯)
「本来、公務員になった人物は、疑われるようなカネを受け取ってはいけない。そこが事件の本質だ」。検察幹部は強調する。
高橋容疑者は広告大手「電通」を退職後、代表を務めるコンサルティング会社「コモンズ」を拠点にスポーツビジネスのコンサル業を本業とし、企業の相談に乗って対価を受け取る仕事を続けてきた。
職務に関し金品を受領すれば収賄罪に問われる「みなし公務員」の組織委理事に就任したのは平成26年6月。だが東京五輪関係者は「『自身がみなし公務員になった』という自覚はなかったのかもしれない」と振り返る。
一方で、高橋容疑者が理事就任後の29年9月、コモンズとAOKIの資産管理会社「アニヴェルセルホールディングス」は月額100万円のコンサル契約を結んだ。特捜部はこれが賄賂に当たる可能性があるとみて捜査を開始した。
通常、賄賂に当たる金銭のやり取りは「裏金」として行われる。政治家の収賄事件では、政治資金収支報告書に記載されていない資金の授受を賄賂と認定することが多い。
だが今回、高橋容疑者とAOKI側との間では、「コンサル契約」という形でカネが支払われていた。組織委理事は、理事の業務と関連しない形で収入を得ることは認められている。コンサル料を理事としての職務権限に関連した賄賂と認定できるか-。これが捜査の焦点となった。
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高橋容疑者がAOKI側からどんな依頼を受け、理事の権限をどう行使したのか。特捜部が注目したのは、コンサル契約から約1年後の30年10月にAOKIが組織委と大会スポンサー契約を結んだという時期の「近さ」だった。
関係者によると、特捜部は任意聴取の中で高橋容疑者に「AOKIを五輪スポンサーにするための契約ではないか」と何度も確認。ある検察幹部は「現金を渡した趣旨に、理事の職務権限に対する依頼の趣旨が10%でも含まれていれば立件は可能だ」と説明する。
一方、贈賄容疑で逮捕されたAOKI側は、現金を渡したことは認めたものの、「会社として五輪事業の便宜を図ってもらったつもりはない」と、賄賂性を否定しているという。今後の捜査では、AOKI側がいつ、どのような取り計らいを依頼したかの解明がポイントとなりそうだ。
検察OBは「高橋容疑者は理事職を受けた以上、本業であるコンサル会社から離れるべきだったという結論になりかねない。捜査は、政府の民間登用で拡大している『一時的な公務員』のあり方にも影響するだろう」と指摘した。