100年以上愛された書店「南陽堂」に幕 「時代に逆らえず」

岐阜市中心部で創業から100年以上にわたり市民に愛された書店「南陽堂」(岐阜市神田町7)が、8月末で閉店する。親子3代で守り続けてきたが、電子書籍やインターネットによる通販が普及。店主の体調不良もあり、決断した。歴史ある老舗の閉店に常連客からは惜しむ声が聞かれる。【黒詰拓也】
南陽堂は、現在の店舗から北に約700メートルの同市若宮町で創業した。明確な創業年は記録に残っていないが、2代目店主の山田伊三郎さん(故人)が生まれた1917年には既に初代店主が営業していたと伝わる。店の位置は戦後間もなく、道路整備のための立ち退きに応じ、現在の長良橋通り沿いに移った。
現在は3代目店主の山田好昭さん(79)とるり子さん(71)夫妻が営む。店舗はビル1、2階の計約120平方メートルで、文庫本やコミック、写真集など数万冊が並ぶ。
夫婦が店を営むようになってからは50年ほどが経過した。JR岐阜駅前の繊維問屋街や柳ケ瀬商店街がにぎわっていたころは店前の人通りが絶えず、1日100人以上が来店した。
「漫画立ち読み、友人と通った」
山田さん夫婦は多くの人に本を楽しんでもらおうと、雑誌だけでなくコミックも自由に立ち読みができるようにした。本が傷んでしまうこともあり、20年ほど前からは、やむなく帯を巻いて立ち読みができないようにしたが、るり子さんは「漫画に帯を付けたのは岐阜市内の書店で最後だった」と振り返る。数十年前から同店に通う女性は「南陽堂は漫画の種類が多く、立ち読みもできると評判で、友人とよく通った」と話す。
しかしながら、スマートフォンの普及に伴って来店者と売り上げは減少。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、最近の来店客は1日に30~40人ほど。好昭さんが体調を崩したこともあり、8月末で店を閉じることを決めた。店先に貼り紙で伝えると、常連客らから「長い間お疲れ様でした」などの声が寄せられるようになった。
好昭さんは「店を閉じるのは残念で寂しく、できれば営業を続けたいが、時代の流れに逆らえなかった」と語り、るり子さんは「店に来た人の喜んだ顔を見るのが楽しみだった。多くの人に長年支えてもらった」と感謝する。
営業は31日午後7時まで。山田さん夫妻は最後のシャッターを閉めるまで、笑顔で客を迎えるつもりだ。