大阪府高槻市で昨年7月、保険金目的で資産家女性を殺害したとして殺人容疑などで再逮捕され、大阪府警福島署の留置施設で1日に自殺した高井(旧姓・松田)凜(りん)容疑者(28)。府警は当初、自殺の予兆はなかったとしていたが、2日になって自殺をほのめかす内容の便箋を自殺3日前に回収していたと説明を一転させた。防ぐことができたはずの自殺を許したことに厳しい批判が上がり、便箋の情報が丸1日以上も明らかにされなかったことには「隠蔽(いんぺい)」を疑う声すら出ている。
府警留置管理課によると、便箋は8月29日夜、凜容疑者の私物のノートに挟まれているのを福島署員が見つけた。30日午前0時過ぎまでに内容を把握し、報告を受けた当直責任者は監視の強化を指示。署長は同日朝以降、担当者が作成した報告書を決裁するとともに、夜間の巡回数を1時間に4回程度から5回に増やすよう指示した。報告書の中身や指示について留置管理課に報告しておらず、事件の捜査本部には30日中に「自殺の予兆がある」とだけ口頭で伝えたという。
留置管理課は、自殺の予兆はなかったとした1日の説明について「福島署から便箋についての報告がなく、把握していなかった」と説明。留置管理課員が福島署で関係書類を調べる中で1日深夜になって判明したといい、監視レベルが最も高い「特別要注意被留置者」への引き上げを検討すべきケースだったとした。
福岡県警本部長を務めた京都産業大の田村正博教授(警察行政法)は「近年、留置施設ではプライバシーを考慮する動きが増している。自殺用のロープなどを発見したわけではなく、署長も監視レベルを引き上げる判断が難しかったのかもしれない」と推測する。
ただ、重大事件の容疑者を勾留しながら、福島署と留置管理課の間で情報共有が不十分だったとの批判も避けられない。留置管理課は「(便箋の発見について)報告があれば特別要注意被留置者への変更や警戒の強化を助言をすることもできた」と釈明。今後、情報共有の実態や連携についても検証する。
犯罪捜査に詳しい近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「自殺を示唆する便箋を把握した時点で、対面監視や監視カメラ設置などを検討しないといけない」とし、「捜査部門も含む府警全体で共有すべきだった」と批判。府警が説明を一転させたことについて「管理不備や隠蔽も勘ぐってしまう」とした上で「どのような報告がなされ、監視体制について誰がどう判断したのか、厳しく検証する必要がある」と訴える。