夏休み終盤、中学生による通り魔事件が発生した。東京都渋谷区で8月20日、母娘を切りつけたとして、埼玉県戸田市に暮らす中学3年の少女・A子(15)が殺人未遂容疑で警視庁少年事件課に現行犯逮捕された。
「あの子、死んだ?」
取り押さえた人々に、逮捕された少女は落ち着いた様子でそう尋ねたという。
警視庁担当記者が話す。
「現場は1997年に東電OL殺人事件が起きた場所からすぐの路地。夜7時半頃、53歳の母親と19歳の娘が刺されました。近くの飲食店スタッフなどがA子のナイフを取り上げるなどして母娘は命を取り留めた。A子と母娘に面識はありませんでした」
A子は取り調べに対し、「死刑になりたくて、たまたま見つけた2人を刺した」「自分の母親と弟を殺すための練習だった」などと供述したと報じられた。
前出の記者が続ける。
「少年事件課の幹部は当日から記者対応に追われ、彼女の供述を次々明らかにしたことから、早い段階で事件の概要が分かったかに見えました。幹部は『母親の性格に自分が似てきたのが嫌になり、母親を殺そうと思った。残される弟も可哀そうなので、一緒に殺そうと考えていた』とする供述も明かしていた。ただ犯行までの経緯が詳らかになるにつれ、供述との齟齬が目立つようになりました」
学校での人間関係が犯行に繋がった可能性も
そもそもA子は当日の昼頃まで、戸田市の自宅に母親と一緒に居た。「塾に行ってくる」と言い残し、電車を新宿駅で降りて人通りの少ない場所を探して現場に行き着いたとされる。
「標的が母親なら、家を出る前に手にかけていると考えるのが自然です。もとより残虐な事件を起こしても、18歳未満には死刑は適用されません」(同前)
小学校時代は地元のスポーツクラブに通っていたA子。ただ、中学1年生の3学期から不登校になったという。A子の母親は「部活を辞めたことや友人関係が不登校の理由だった」と話しているとされ、学校での人間関係が犯行に繋がった可能性も否定できない。
少年事件に詳しい捜査関係者が指摘する。
「子供の供述は大人よりも慎重に扱わなければならない。発達が未熟で、自分の心情を理解できていないことも多いからだ。動機を聞かれてもニュースなどで聞いたことがある『台詞』を言うだけで、本心は別のところにある子供もよくいる。A子の場合も、もう少し別の動機があった可能性があり、取調官との信頼関係の構築が大事になる」
死者は出ていないとはいえ、事件の重大性に鑑みて、検察に逆送される可能性もあるA子。鑑定留置を経て、最終的に大人と同じ刑事裁判に付されるか、家裁での審判に戻されるかが決まる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年9月8日号)