思考など高度な認知機能に関わる脳の部位で、絶滅した旧人「ネアンデルタール人」は現代人より神経細胞の数が少なかったとする研究成果を、ドイツのマックス・プランク研究所などの国際チームが発表した。ネアンデルタール人が絶滅した謎の解明につながる可能性がある。論文は9日付の科学誌サイエンスに掲載された。
4万~3万年前に絶滅したネアンデルタール人の脳の体積は、現代人とほぼ同じだったと考えられている。一定の知能を持ち、現代人と一時期共存していたが、なぜ絶滅したのかについては諸説がある。
チームは、現代人で特有の変異がある遺伝子「TKTL1」に着目。この遺伝子は高度な認知機能に関係する脳の前頭葉で働いており、ネアンデルタール人の骨に残ったDNAにはこの変異がないという。
この変異遺伝子をマウスの胎児の脳に加えたところ、神経細胞の元になる細胞が増え、実際に神経細胞が増えた。一方、この遺伝子の変異をなくした人の細胞で、脳を模した立体組織「脳オルガノイド」を作製すると、神経細胞が少なくなることも確認できたという。
現代人の前頭葉は、ネアンデルタール人に比べ盛り上がった形をしており、神経細胞数が多かったと考えられている。チームの一員でフィンランド・ヘルシンキ大の難波隆志グループリーダー(神経発生学)は「現代人との前頭葉の形の違いを遺伝子レベルで明らかにできた」と話す。
東京大の太田博樹教授(ゲノム人類学)の話「遺伝子変異で神経細胞が増える可能性を示す興味深い結果だが、実際にこの変異で抽象的な思考を操れるようになったと結論づけるのは難しいだろう」