詐欺悪用の固定電話番号、対策開始から3年で1万件超を停止に…手続き中の被害防止課題

全国の警察と電話会社が連携し、特殊詐欺に悪用された固定電話番号を利用停止にする対策が始まってから、今月で3年となる。警察庁によると、これまでに計1万件超の番号を利用停止にした。被害抑止に向け、新たな課題も浮上している。(西原寛人、建石剛)

特殊詐欺グループが使う固定電話を利用停止にする対策は、警察庁と総務省、NTT東日本・西日本などの大手電話会社が協力して2019年9月に全国で一斉に始まった。
仕組みはこうだ。警察が捜査や市民からの通報で不審な電話番号を把握した場合に、まず警察官が折り返し電話をかけ、詐欺をやめるよう警告する。
その後、同じ番号が再び詐欺に使われたことが確認された場合に、都道府県警が電話会社に要請し、番号を利用停止にする。
1回目の把握ですぐに利用停止にしないのは、一般のセールスを詐欺電話と勘違いするケースなどが想定されるためだ。誤って利用停止にすれば、利用者が被る不利益は大きい。
警察庁によると、19年9~12月は887件、20年は3378件、21年は4119件、今年上半期は1862件(暫定値)をそれぞれ利用停止にした。合わせて1万246件に上る。
全国の特殊詐欺被害は19年に約315億円だったが、21年は約282億円に減っており、警察庁は「番号停止は被害抑止に一定の効果がある」とみている。

対策開始から3年たち、新たな課題も浮かんでいる。せっかく不審な番号を把握しても、利用停止にする手順を踏んでいる間に、再び番号が悪用され、詐欺被害が発生するケースがあるのだ。
例えば、昨年4月、東京都練馬区の高齢者宅に「医療費の還付を受けられる」と不審電話があったケースでは、警察署の担当者が「還付金詐欺」の疑いが強いと判断し、折り返し電話をかけて「詐欺をやめるように」と警告した。
だが、その10日後、都内の複数の高齢者宅に、同じ番号から立て続けに詐欺の電話が入った。通報を受けた警視庁が同日中に番号の利用停止要請を行ったが、この日、江東区の高齢女性ら3人が計約1000万円をだまし取られた。
警視庁が今年に入り、都内で昨年把握した不審電話約5400件について調べたところ、こうした再度の番号悪用による詐欺被害が約480件あった。被害額は都内全体(約66億円)の13%にあたる約8億8000万円に上った。

警察当局は「再度の番号悪用を少しでも早く察知し、被害を食い止めなければならない」として、対策を強化している。
警視庁はシステム開発会社「トビラシステムズ」(名古屋市)と連携。今年6月以降、詐欺被害が確認された地域の高齢者に、同社が開発した家庭用の「迷惑電話防止装置」約3000台を貸し出した。
この装置を固定電話に取り付けると、遠隔で着信履歴を確認できる。警視庁が同社に不審な電話番号の情報を提供し、同社が着信履歴を確認。該当する番号が見つかった場合に、警察官が住人に連絡し、電話の内容を聞き取る。詐欺電話と判断すれば、即座に利用停止の手続きを取る。
この手法で、8月までの約3か月間に約90件の番号を利用停止にしたという。警視庁幹部は「効果を検証し、装置の増設も検討していく」と話した。
「対面」の手口増加

警察庁によると、今年上半期(1~6月)に把握した全国の特殊詐欺被害は7491件で、上半期としては5年ぶりに増加した。手口別では、息子などを装う「オレオレ詐欺」が前年同期比19%増の1695件で、うそをついてキャッシュカードなどを持ち去る「詐欺盗」が同18%増の1398件だった。いずれも被害者宅を直接訪れる手口で、コロナ禍の行動制限が緩和されたことが影響している可能性がある。
現金を受け取る「受け子」役の募集など、特殊詐欺グループの動きが活発化しており、各地の警察が警戒を強化している。