正当報酬か裏口座か 五輪汚職、捜査の焦点は「コモンズ2」

正当な報酬か、賄賂を隠す「裏口座」か―。東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事、高橋治之(はるゆき)容疑者(78)=受託収賄容疑で再逮捕=の知人が代表を務めるコンサルティング会社「コモンズ2」の果たした役割の解明が重要になっている。同社は経営トップらが逮捕された出版大手「KADOKAWA」からの資金の受け皿となり、広告大手「大広」からも不透明な資金提供を受けている。高橋容疑者との「一体性」の立証がカギとなる。
協賛2社と関係
東京地検特捜部は、KADOKAWA側からコンサル料名目でコモンズ2に振り込まれた計約7600万円を、高橋容疑者への賄賂だと判断した。ただ、コモンズ2の代表は高橋容疑者ではなく、広告大手「電通」で同容疑者の後輩に当たる深見和政容疑者(73)=同容疑で逮捕=だ。
深見容疑者は電通時代に雑誌局長を務め、KADOKAWAにはもともと人脈があった。同社で五輪関連部署の担当室長だった馬庭(まにわ)教二容疑者(63)=贈賄容疑で逮捕=とは、スポンサー契約を巡り直接やりとりしていたという。
コモンズ2は「大広ルート」でも登場する。大広は電通が独占的に担っていた大会スポンサー企業の選定に「販売協力代理店」として参画できるよう高橋容疑者に仲介を依頼、計約1400万円をコモンズ2に支払ったとして特捜部から本社の家宅捜索を受けたが、もともとはコモンズ2の取引先だったとされる。
高橋容疑者は、職務に対する金品の受領を禁じられた「みなし公務員」だったが、深見容疑者は民間人のため、特捜部は刑法の定める「身分なき共犯」として逮捕した。
検察OBは「高橋容疑者に対する支払いだと贈賄側が意識していたことを立証できれば(コモンズ2への)振り込みは賄賂性を帯びるが、そうでないと『単なる民間同士の商取引』になってしまう。共謀の立証が最も重要だ」とする。
AOKIのCMも…
関係者によると、コモンズ2の社名は高橋容疑者のコンサル会社「コモンズ」にあやかり名付けられた。高橋容疑者は一時期、コモンズ2で取締役を務めていたことがあり、株式の2割を保有しているが、両社の間に資本関係はない。
特捜部がコモンズ2への支払いを高橋容疑者への賄賂と判断した背景には、日頃から仕事を融通し合っていた高橋、深見両容疑者の関係の「濃さ」がある。
たとえば、高橋容疑者に対する贈賄罪で前会長ら3人が起訴された紳士服大手「AOKIホールディングス」の絡む取引でも、両者は連携していた。
関係者によると、AOKI側とコンサル契約を結んでいた高橋容疑者は、テレビCMに出演させる目的で著名な日本人競泳選手をAOKI側に紹介。実際にCMを作成したのは深見容疑者だった。関係者は「高橋容疑者がアイデアと人脈を提供し、深見容疑者が広告会社としての実務をコモンズ2で請け負う。2人は補完関係にあった」と話す。
ある検察幹部は「大切なのは『高橋容疑者へ支払い』という趣旨の立証。コモンズ2へ振り込まれた資金をその後、両容疑者がどう扱ったかは取り分の『分配』に過ぎず、振り込まれた時点で共謀は成立する」と自信をのぞかせる。
一方、検察OBは「将来的に高橋容疑者へどのように資金を渡すかといった計画なども含めて、立証する必要があるだろう」としている。
(吉原実、桑波田仰太、石原颯)