三井不動産は9月27日、東京・日本橋の商業施設「COREDO室町テラス」をオープンする。書店を中心とした台湾発のライフスタイル提案型店舗「誠品生活(せいひんせいかつ)」など、31店舗が出店。誠品生活では書籍や雑貨、食などを通じて台湾文化を発信するほか、工芸品など日本の伝統文化を紹介する店舗も集めた。同社が日本橋で手掛ける「COREDO」シリーズの他の商業施設とともに、多様な人やモノが集まる街の一翼を担う施設にする。
「数年にわたる誘致活動を経て、(誠品生活の)出店に至った」と、三井不動産の商業施設本部アーバン事業部長、牛河孝之氏は説明する。COREDO室町テラスの「誠品生活日本橋」は、2階フロア全体を占める大型店だ。書店のほか、雑貨や食材を扱う店舗、飲食店などが入る。
誠品生活は台湾や中国などに約50店舗を展開しているが、日本では初出店。近年、日本でも雑貨や家電などのライフスタイル商品を提案する書店が増えているが、「グローバルな視点でライフスタイルを提案することで差別化したい」(牛河氏)という。「COREDOシリーズの中でも、全体にいい影響を与える店舗になる」(同)と、かなり力が入っている。
同店舗のフロアは、「誠品書店」「誠品文具」「セレクト物販・ワークショップ」「レストラン・食物販」の4ゾーンで構成。台湾の食品や雑貨などのブランドを豊富にそろえるほか、手作り体験ができるガラス工房や手ぬぐい店など、日本橋ならではの店舗もある。
最大面積を占める書店を歩いてみると、他の書店とは一味違った体験ができそうだ。もちろん「雑誌」「人文社会」「ビジネス」など、普通の書店と変わらない種類の本をそろえているが、目を引くのは誠品独自の企画コーナーだ。
台湾の人が選ぶ、日本の“代表的”な本
独自企画の一つが、1990年から毎月実施している「誠品選書」。日本1号店の日本橋店でもこの書棚を設けた。ここには、内容や形式、社会的影響力などを考慮して誠品が選んだ書籍を置く。棚の前にはゆったりと座れるスペースも設けられている。
誠品選書の棚では、日本初出店の記念として、誠品が開業した30年前から現在までの日本の“重要な出版物”を厳選した特別コーナーを設置。小説やノンフィクション、絵本、ビジネス書などさまざまなジャンルから選んでいる。また、毎月変わる選書の棚は、「日本」と「台湾」で分かれている。日本の棚では話題性や独創性の高い作品を月ごとに紹介。台湾の棚では、台湾の店で発表される最新の誠品選書を紹介する。
誠品選書の手前では、企画展も開催されている。ここは「日本と台湾の交流」がテーマになっているようだ。まず、誠品グループで働く212人のスタッフが“最も代表的だと思う”日本の出版物163冊を推薦するコーナー。『源氏物語』『人間失格』『金閣寺』などの名作だけでなく、『雨ニモマケズ』の世界を表現した画集、漫画『AKIRA』など、選んだ人のこだわりを感じる本もあり、見ていて飽きない。1冊ずつ推薦コメントも付いており、台湾の人の視点から日本を見つめ直す機会にもなりそうだ。また、日本と台湾の“生活”をテーマに、写真家やイラストレーターなどが制作した作品の展示コーナーもある。
イベントスペースとしても使われる「フォーラム」の一角には、誠品として初の取り組み「専科本棚」がある。世界やアジアで話題になっている12テーマを取り上げ、関連する本を紹介。3カ月ごとにテーマを変えるが、大きなニュースがあれば随時入れ替えることもあるという。最初のテーマは「米中貿易戦争」「台湾、同性婚合法化へ」「副業が今流行っている!『定時退社』経済」などが選ばれていた。その隣には「日本橋今昔」というコーナーも。日本橋の歴史や生活、江戸の文化などに関する本が並んでいる。
インテリアにのれんを採用したり、文学コーナーでも台湾の絵本などを紹介したりと、企画以外も細部に見どころがありそうだ。担当者は「展示などを通して誠品の思いを伝えたい。本が好きな人、そして台湾に興味がある人にぜひ来てもらえたら」と話していた。
「日本橋再生計画」は新たなステージに
三井不動産は2004年、「日本橋再生計画」第1弾として「COREDO日本橋」を開業。都市の多様化とにぎわい創出を目指し、「COREDO室町」や複合施設などを整備した。再生計画は14年から第2ステージに入り、「COREDO室町2」「COREDO室町3」などを開業。路面店開発による路地の整備なども手掛けた。
そして、COREDO室町テラスが入る日本橋室町三井タワーの完成をもって、再生計画を第3ステージに移行させる。五街道の起点として全国から人やモノが集まった江戸時代の日本橋を再現する「オープンな街づくり」を進めるという。その一環として、日本橋川沿いに商業施設やオフィス、広場などを整備。川を含めて幅約100メートル、長さ約1200メートルの広大な親水空間が生まれる予定だ。
牛河氏はCOREDO室町テラスの位置付けについて、「これまでのCOREDOはにぎわいをつくることに主眼を置いていた。今回はさらに進化して、もう一段、幅広いお客さまに多様な体験を提供したい」と話す。COREDOシリーズ全体で年間250億円程度の売り上げを目指す。ビジネスの街としてだけでなく、商業エリアとしての認知度をさらに高めていくための重要な拠点に位置付けている。