同期入社で職場結婚したエリート社員夫婦に何があったのか──。
有毒のメタノールを妻に摂取させ、殺害したとして東京都大田区の製薬大手「第一三共」研究員の吉田佳右容疑者(40)が16日、警視庁捜査1課に逮捕された。
吉田容疑者は北海道大大学院卒で妻の容子さん(死亡当時40)は京都大大学院卒。2人は2007年に第一三共に入社した同期で、3年後の10年に結婚した。翌11年、容子さんは別の会社に移り、事件当時は長男と3人暮らしだったが、数年前から夫婦仲が悪くなり、普段から別々に食事をするなど家庭内別居状態が続いていた。
容子さんの死亡が確認されたのは、今年1月16日午前のこと。死因は急性メタノール中毒で、搬送先の病院から警察に通報があった。死亡する2日前、在宅勤務を終えた容子さんは息子と2人で夕食を取り、吉田容疑者は2人が食事を終えた午後9時以降に帰宅。翌15日の朝、容子さんの体調が悪化した。容子さんは嘔吐を繰り返し、ろれつが回らなくなり、ベッドから転げ落ちるなど暴れ回り、服を脱ぎながら冷たい風呂に漬かるなど、奇行がみられた。16日朝、吉田容疑者は寝室のベッド脇の床の上でぐったりしている妻を見つけ、「妻の意識がない」と119番した。
「殺害方法や手段、摂取量、回数など不明なことばかりだが、容子さんの胃から致死量のメタノールが検出され、血中と尿からも検出されたことから、飲食物に混入させたとみている。吉田容疑者は会社で新薬など医療品の開発に携わる研究開発に所属し、研究でメタノールを扱うこともあった。吉田容疑者だけでなく、容子さんも薬物に関する知識は豊富でメタノールの危険性は十分知っている」(捜査関係者)
自宅からは残りのメタノールも容器も見つからず、2人のスマホの分析から第三者の介在もなかったため、警察は室内で吉田容疑者に摂取させられたと断定。口から摂取した場合の致死量は30~240ミリリットルという“劇薬”だけに、含有率100%の原液を購入するには、本人確認や用途を聞くなど厳しい条件が課せられる。しかし、吉田容疑者のスマホやパソコンにメタノールの購入履歴は残っておらず、警察は職場からメタノールを持ち出した可能性があるとみている。第一三共広報担当者は「持ち出す際は、記録簿への記入を義務付けるなど管理を徹底している」と説明した。
■摂取するとけいれんや呼吸困難でもがき苦しむ
「容子さんの直近のインターネットの検索履歴は長男の熱に関するようなもので、本の予約をしたり、今後の予定を立てるなど、自殺する動機が見当たらなかった。メタノールを摂取すると、けいれんや呼吸困難を起こし、もがき苦しむことは本人も熟知している。本気で自殺する気なら、もっと楽に確実に死ねる方法を選んだはず。だから自らメタノールを摂取する可能性はないとみて、夫の逮捕に踏み切った」(捜査関係者)
調べに対し、吉田容疑者は「殺意を抱いたことはなく、家にメタノールを持ち込んだことはない」と否認。妻の豊富な薬学の知識が、「毒殺」逮捕の決め手となった。