増税ラッシュの足音が聞こえてくる──。2023年度予算編成の最大の焦点となっている防衛費増額の財源。岸田政権は財源確保策として「つなぎ国債」を発行する方向で検討していることが明らかになった。防衛力強化や財源を議論する有識者会議の初会合を30日に開く。
防衛費について、自民党内ではNATO(北大西洋条約機構)水準のGDP比2%以上への増額を求める声があり、5兆円規模の安定財源確保が必要となる。「何らかの将来の償還財源を念頭に置くことは、財政健全化を考えれば必要」(鈴木俊一財務相)、「国債は駄目との立場は取らない」(木原誠二官房副長官)と「つなぎ国債」をにおわす発言が相次いでいたが、どうやら本気で発行するようだ。
「つなぎ国債発行は増税とセットです。当面は借金でしのいでおいて、後で財源を捻出し、ツケを返済するということです。防衛費増額のために5兆円のつなぎ国債を発行すれば、必ず5兆円の増税が行われます」(立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏=税法)
つなぎ国債は東日本大震災の復興事業で活用された。その後、「復興特別」と称して所得税や法人税を引き上げ、ツケ払いに充てられた。
■いずれ消費税もターゲット
防衛費増額の財源には、法人税を軸に金融所得課税やたばこ税も検討中だ。与党関係者が経済界の一部に財源案の大枠を伝えたという。
「まずは、富裕層向けや嗜好品への増税から入るのでしょうが、いずれは、所得税や消費税もターゲットにされるのは間違いありません。国防の充実は、収入に限らずあらゆる国民が恩恵にあずかるなど、いくらでも理屈はつけられます。この先、戦時国債のように、どんどんつなぎ国債が発行され、次々と増税が行われる恐れがあります。財源の裏づけがあり、財政規律は維持できるので、財務省は文句を言わない。増税による軍事大国化が加速しかねません」(浦野広明氏)
「何もしない」と称されてきた岸田政権だが、軍事大国への道筋はクリアなようだ。つなぎ国債の発行を許せば、軍事は栄え、暮らしはボロボロになる。