教科書会社「大日本図書」(東京都文京区)の営業担当幹部らが7月、茨城県内の料亭で同県五霞町の倉持伸樹教育長(60)と会食していたことがわかった。代金は同社が支払っていた。教科書会社による過度な営業は過去にも問題になっており、2016年に教科書協会が自主ルールを強化し、採択関係者への不当な利益供与を全面的に禁じたが、ルール違反の営業活動が行われている実態が浮かぶ。
大日本図書によると、会食は7月1日に茨城県西部の料亭であった。東日本支社長の役員と茨城県の営業担当社員、倉持教育長と知人の元中学校長の計4人が参加。同社が1人約9500円の飲食代を負担し、倉持教育長らに約1600円の菓子も渡したという。
教科書協会の自主ルール「教科書発行者行動規範」では、教科書会社に対し、教育長ら教委関係者や校長・教員を「採択関係者」とし、接待や金品の提供など一切の利益供与を禁じている。
読売新聞の取材に対し、同社は接待の事実を認め「行動規範で禁止されている、重大なコンプライアンス違反に当たり、誠に遺憾だ」と回答した。同社は今後、第三者を含めた委員会を設け、調査する予定だ。
文部科学省は「事実なら極めて遺憾。厳正に対処したい」としている。教科書協会は「事実ならルールで禁止している行為そのもの。遺憾としか言いようがない」と答えた。
一方、倉持教育長は、大日本図書から接待を受けたことについて「自主ルールは知らなかった。認識が甘かった」と語った。
五霞町では、複数の市町村が共同で同じ教科書を採択する「採択地区」を近隣の5市町で構成している。この地区では今年度、小学校の算数、理科、生活、保健(体育)の4教科と、中学校の数学と理科の2教科で、同社の教科書を使用。同社が発行している教科書のうち、中学の保健体育を除いてすべて使っている形となる。地区の小中学生は約2万人おり、各教科合わせると、この地区では同社の教科書が年間数万冊、使用されているとみられる。
大日本図書は取材に、会食は、今年3月に中学校長を退職した倉持教育長の慰労が目的で、席上でも「採択の話はなかった」とした。
教科書の採択は4年に1度で、来年度は小学校、再来年度は中学校の採択が行われる。1度採択されると4年間安定した売り上げが見込めるため、競争が激化しやすい。
15~16年には、教科書会社10社が約3500人の教員らに検定中の教科書を見せ、意見を聞いた謝礼名目で現金などを渡す問題が発覚した。最大手の東京書籍(東京都北区)でも今年、教員との不適切な関係が疑われる事案が判明している。
文科省幹部は「教科書採択は本来内容で判断すべきもので、接待や利益供与が行われれば公正な競争を阻害しかねない。謝礼問題から数年たった今、業界が『のど元過ぎれば』となっているのではないか」と危機感をにじませた。