安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件は、8日で発生から3か月となる。容疑者の供述などから、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金の問題がクローズアップされ、家庭連合は5度にわたって記者会見を開き、釈明に追われてきた。背景には信者が動揺し、脱会の動きが相次いでいることがある。
9月22日、東京都渋谷区の本部で開かれた記者会見。家庭連合が新設したという「教会改革推進本部」の本部長に就任した勅使河原秀行氏は「断固として改革を推進していく」と語った。
家庭連合に注目が集まったのは、事件で逮捕された山上徹也容疑者(42)(殺人容疑で送検、鑑定留置中)の母親(70)が、家庭連合に1億円以上献金し、破産していたことが明らかになったからだ。山上容疑者は家庭連合への恨みを供述し、生い立ちが報じられると、元信者や、親の信仰で苦しむ「宗教2世」らが声を上げ始めた。
会見は、批判が集まる過度な献金の見直しを説明するためだった。しかし、勅使河原氏は「献金はあくまで信者の自由意思」と従来の主張を展開し、記者から「過度」の定義や実効性を繰り返し問われていら立つような場面もあった。改革をアピールするにはほど遠い内容だった。
今月4日の事件後5度目の記者会見では「月収の10分の3以上の献金は記録する」といった改革の具体案を公表。だが、金額に上限を設けることは「信者の自由意思がある」と否定した。
家庭連合によると、事件後、脱会の申し出は数十件に上り、9月22日までに対応した返金相談は114件あるという。
家庭連合は、信者の引き留めに動いている。各地の2世向けに「SEISYUN TV」と題した動画をネットで定期的に配信。8月7日の映像では、献金について幹部が「ささげることで喜びが得られる」と語り、2世が「献金は私たちを苦しめるものではなく、喜びであり、誇り、感謝だ」と笑顔で語る場面もあった。
両親が信者だが、活動から距離を置く関西地方の男性(20歳代)は「多くの2世が容疑者に自分の境遇を重ねており、今後どんどん離れていくのでは」と語る。関東地方の60歳代の女性は、家庭連合が一連の会見で「献金は自由だ」と繰り返すのを見て信仰心が消えた。「献金を求められて、借金までした私は何だったのか」と憤った。
家庭連合は取材に「信者が動揺しているのは事実。改革を着実に実行して安心してもらいたい」とした。
家庭連合はメディア批判も繰り返し、9月29日には民放2社と番組に出演する弁護士らに損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
西田公昭・立正大教授(社会心理学)は「記者会見からは被害に向き合う姿勢が見えない。今後、組織の弱体化を防ぐため、信者への引き締めを強化することが懸念される。主張している改革が本当に実行されているのか、新たな被害者が生まれていないのか、社会全体で注視していく必要がある」と指摘している。