「いじめを組織ぐるみで隠蔽(いんぺい)している大人を見て育った子供たちはどんな大人になるかもっと想像すべきだ」――。2011年に大津市でいじめを受けた中学2年の男子生徒が自殺してから11年となった11日、大津市梅林1の県教育会館での記者会見で男子生徒の父親(57)は、各地で学校や教育委員会が適切に対応しない事例が後を絶たない現状への危機感を訴えた。
県内では、野洲市の小学校で担任による児童へのいじめ行為があったことが毎日新聞の報道で判明。市教委は報道まで問題を発表しなかった。男子生徒の父親は「自分のしていることがいじめかどうかも分からない教員が教壇に立ち、それを放置しているのが今のシステムだ」と批判。「いじめは人を死に追いやる怖いものだという認識を持てていない教員が多いのではないか」と話した。
代理人を務めた石田達也弁護士(滋賀弁護士会)は北海道旭川市の女子中学生の凍死事案など、各地でのいじめ問題に取り組む。大津での事件を受けて作られたいじめ防止対策推進法で規定するいじめの定義を無視し、恣意(しい)的な定義を持ち込む調査委員会があると明かし、「感覚頼りだから見逃しや見殺しが起きてきた。調査対象となりうる教委が調査をするのは矛盾している」と指摘。「(いじめ防止への取り組みが)劣化している。危機感を持ってほしい」と訴えた。
父親は現在いじめの加害者となっている子供たちに向けて、「いじめは人の尊厳を傷つけて、その子を死に追い詰めている行為だ。今すぐやめなさいと言いたい」と呼び掛けた。
学校で集会 全校生徒で黙とう
11日は男子生徒の通っていた大津市内の市立中学校で命の大切さを考える集会があり、全校生徒約800人が参加した。集会は男子生徒が自殺した翌年の2012年から毎年、命日に合わせて実施している。
新型コロナウイルス感染防止のため、各教室で校内放送を通して実施。生徒たちは各学年で道徳学習の成果を発表する映像を視聴。校長は、医師の故日野原重明さんの詩を引用し、「命も時間も、目には見えません。だからこそ大切なものなのです」と呼び掛け、全校生徒で黙とう。各教室では担任による講話などで命の大切さについて考えた。
同市教委では午前8時45分に幹部職員ら46人が集まり、黙とうした。島崎輝久教育長は「二度と悲しい出来事を繰り返さないという強い思いで、夢や目標達成に意欲的に取り組む子供たち一人一人を大切にした学校づくりを継承していくよう、教育長として全力を注ぎたい」とのコメントを発表した。【菅健吾】