《札幌・女子大生死体遺棄》「死にたい人を殺すことでしか役に立てない」“死神”小野容疑者が自宅で一夜を過ごした“自殺志願女性”に語った“転落の半生”【部屋にはボロボロのスヌーピー人形】 から続く
札幌市のアパートで女子大学生・瀬川結菜さん(22)の遺体が発見された事件。北海道警察は10日、アパートに住んでいた無職の小野勇容疑者(53)を死体遺棄容疑で再逮捕した。
小野容疑者のツイッターには「3人目」という記述が見つかるなど、瀬川さんの殺害とは別の犯行をほのめかすような投稿もあり、道警は小野容疑者の一連の投稿の真偽について慎重に調べている。
また、小野容疑者は、既に瀬川さんを殺害したことを認める供述を始めているという。2人の犯行前後の足取りも少しずつわかってきた。社会部記者が解説する。
「小野容疑者は道警の調べに対し、瀬川さんに『殺して欲しいと依頼されて殺害した。遺体は処分して欲しいと頼まれた』と供述しています。瀬川さんは3日、『友達と待ち合わせをしている』と家族に言い残し、自宅のある小樽駅から1人電車に乗り、手稲駅で小野容疑者と合流。付近の防犯カメラには、小野容疑者が借りたレンタカーの助手席に瀬川さんが乗っている姿も確認されています。
供述などからも瀬川さんを殺害した可能性は高いと思われますが、小野容疑者がツイッターで触れた他の2人の被害者についてはまだ確実なことはわかっていません」
「鍋とパスタがおいしかったから」小野容疑者の自宅へ通った
小野容疑者と瀬川さんが知り合ったきっかけはツイッターである。取材を進めると、小野容疑者は瀬川さん以外にも複数の女性とツイッターを通じて知り合い、接触していたことがわかってきた。3年前に小野容疑者と出会い、頻繁に自宅を訪れていたという知人女性が話す。
「まだ私が高校生だった2019年ごろ、精神的に病んだツイートをしたら、突然いっさ(小野容疑者のツイッターアカウント名)さんからDMが来ました。それからは『今日も生きてる?』『なんでしんどいの?』という連絡が頻繁に来るようになって……。
すすきののシーシャバーで初めて会いました。いっささんの手首には六芒星のタトゥーが入っていて、『人に頼んだら失敗したから自分で彫るようになった』と言っていました。まだ技術的には素人でしたが、私もタトゥーを入れて欲しいと思い、その後自宅に行くようになりました」
それからは週末の午後になると小野容疑者の自宅で昼から夜まで過ごすようになった。タトゥーを彫ってもらうという目的に加え、この知人女性が小野容疑者の自宅に通ったのは「鍋とパスタがおいしかったから」だという。タトゥーを彫った後は部屋でそれぞれがゲームをやるなどして過ごし、買い物など外に出ることも滅多になかった。
生活保護で無料でもらった薬を女性に売り、生活資金にしていた
別の知人女性によると、小野容疑者は金に困っていたようで大量の薬がうつった写真をツイートし、「欲しい人はDMください」と募ることもあったという。生活保護で無料でもらった薬を安く女性たちに売り、生活資金にして暮らしていたという。障がい者の等級についても「医者に交渉して2級にしてもらった。地下鉄も乗り放題で年金も上がった」と、この知人に話していたようだ。
小野容疑者は年代モノのウイスキーを自慢するなどコレクター気質だった。部屋の荷物をどかすとサバイバルナイフが出てきたり、自慢の料理を食べる時にもしっかり片づけなければならないほど、自宅にはモノが溢れ散らかっていた。
父親の遺骨を壺に入れて自分の部屋で保管
その荷物のなかには、ある意外なモノも含まれていた。前出の知人女性が話す。
「父親の遺骨を壺に入れて部屋で保管していました。母親や兄弟とは疎遠になってしまったようでしたが、父への愛着は相当強かったようです。『《勇》という名前は、お父さんとお祖父さんが新選組の近藤勇が好きだったからつけたんだ』と嬉しそうに話していました。
娘がかわいいと話すこともありましたね。常に孤独を感じている様子はありました。私と出会う前は彼女もいたようですが、相手も『リストカットしたいからカッター買ってきて』と言うような女性だったそうで、お互い鬱でうまく行かず、別れたようです」
小野容疑者は自身が精神的に追い詰められた理由を「死に場所を探して傭兵になったが、殺した人間が夢に出て来るようになり、鬱がひどくなった」と語っていたという。
睡眠薬と一緒にウイスキーを飲み、昼から酒の臭いを放つように
2021年ごろからは小野容疑者は「眠れない」と言うようになり、睡眠薬と一緒にウイスキーを飲み、昼から酒の臭いを放つようになったという。タトゥーを彫る時にも酔っ払っていて、それが理由で失敗したことをきっかけにして、この知人女性は小野容疑者と次第に疎遠になっていったという。一時的とはいえ、危険な臭いに溢れた小野容疑者の自宅に、それでも女性が通った理由は何だったのか。
「いっささんは何でも話を聞いてくれるし、居場所をくれた。自分の家にはギスギスして帰りたくない。私が皮下脂肪が見えるぐらい深いリストカットをしたときも、母親は諦め顔で何も言わなかった。『ヤバいもの見ちゃったよ』ってそんな感じですよね。だけどいっささんはそれなりに心配してくれるし、『死にたい』といっても『そうだよね』と引かずに受け入れてくれました」
「私も死にたくなったら殺してくれるの?』と聞くと…
この女性には小野容疑者は当時から既に「人を殺して札幌の山に捨てた」と話していたようだ。小野容疑者は「死にたい」とつぶやく人に頻繁に連絡していたという。しかし、具体的な「殺し方」などの詳細を伝えると「やっぱり生きていきます」と相手から“ドタキャン”されることも多かったという。
だが、そんな時はむしろ、小野容疑者は「生きることを選んでくれた」と嬉しそうに語っていたという。
「『今日もドタキャンされた』といっささんが話していたある日、『私も死にたくなったら殺してくれるの?』と聞いてみたんです。すると、『その時になったらな』と。そしたら急に気が楽になって……。あ、私も死にたくなったら殺してくれる人がいるんだなって。じゃあもう少し頑張ろうと思えたんです。
料理の時には、フライパンで大きな火で肉を焼く様子を見せ、私が驚くのを見て嬉しそうにする、“エンターテイナー”な一面もありました。一緒に過ごした時間は……正直、楽しかったですね」
被害者の瀬川さんは金銭的に苦労していた
こうした小野容疑者の“魔力”に、瀬川さんも引き寄せられてしまったのだろうか。瀬川さんが幼少期から悩む姿を見ていたというのは一家と付き合いがあった知人女性だ。
「お母さんが精神的に不安定で、生活が苦しく悩んでいる様子でした。幼い頃は子供ながらに家族についてポロポロと不満を漏らすことがありましたね。頭はいい子でしたが、社交的というわけではなく少人数で遊ぶ子でした。友達が朝迎えにいって一緒に登校することもありましたが、それを無視して、1人で早歩きで登校していく姿も見たことがあります」
大学時代の知人によると、瀬川さんは大学進学後、1年時から「優等生」として名が通っていた。遅刻などもなく大学のボランティア活動などにも精を出していた。就職にも良い病院を勧められるほどの成績を残した。目指していた作業療法士の国家試験についても「8~9割とって上位で合格する」と周囲に述べるほど熱心に勉強に励んでいたという。ただ、金銭的には苦労しており、一家を養うため、夜の街に働きに出ることもあったのだという。
友達からは「シルバニア」と呼ばれていた
「友達からは小柄だったからか、シルバニアファミリーからとって『シルバニア』と呼ばれていました。たまに癇癪をおこすことはありましたが、基本的には物静かな優等生で泊まりに行くような友達もいました。ただ卒業を控えた昨秋、夜の街で働いていることが友人にばれてしまって……。
その後、友達にいじめられ、完全に孤立して授業に出られなくなり、留年してしまったんです。それからは疎遠になり、卒業後の飲み会などにも一切来ていません。性格的にもろい部分があった」(大学時代の知人)
大学に通わなくなった後は、地元・小樽で働いていたようだ。
「その後は小樽のメイド喫茶で働いていました。本人は夜の街で働く女性のようにブランドものを着たりする子ではなかったですし、生活も派手ではない、真面目な子でした。本人から死にたいという話は聞いたことがありませんでした。家族を残して死ぬような娘ではなかったはずですし、今はただ訃報を聞き驚いています」(同前)
小野容疑者は悩み苦しむ瀬川さんの心につけ込んだのだろうか。今後の捜査の進展が待ち望まれる。
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