金融庁や警察庁などは14日、警察庁サイバー特別捜査隊の捜査などで、北朝鮮の対外工作機関傘下にあるとされるハッカー集団「ラザルス」による日本の仮想通貨(暗号資産)交換業者に対するサイバー攻撃が判明したと発表した。今年4月に同隊が設置された後、サイバー攻撃の相手方を特定して非難声明を出す「パブリック・アトリビューション」が実施されるのは初めて。
警察庁などによると、ラザルスは2009年ごろから、各国の金融機関などを標的にサイバー攻撃を仕掛けているとみられ、16年にバングラデシュの中央銀行から預金が盗まれた事件などに関与したとされる。経済的な困窮状態が続く北朝鮮が、外貨獲得の手段としているとみられている。
日本では数年前から、数社の大手仮想通貨交換業者がサイバー攻撃を受けており、一部では数十億円単位の価値がある仮想通貨が不正送金されるなどの被害が確認された。そのため、警察庁関東管区警察局に設置されたサイバー特別捜査隊などが捜査したところ、ラザルスが関与したと判断したという。
攻撃者が標的企業の幹部を名乗る偽メールを送ったり、SNS(ネット交流サービス)で取引を装ったりして従業員に近づくケースがあるといい、警察庁は交換業者などに注意を呼び掛けている。
警察庁は今後もパブリック・アトリビューションを積極的に実施する方針。21年4月に警視庁が摘発した16~17年の宇宙航空研究開発機構(JAXA)などへのサイバー攻撃では、中国人民解放軍の関与を指摘していた。【松本惇】