岸田首相が「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の調査を指示したことを巡り、与党からは歓迎の声がある一方、「判断が遅い」との不満も出ている。野党は早期の解散命令請求などを訴え、攻勢を強めている。
「先延ばし」野党は攻勢
「被害救済、再発防止、国民の不安解消の観点から適切な判断だ」
自民党の茂木幹事長は17日の役員会で、首相が宗教法人法による「質問権」を行使しての調査を打ち出したことを、こう評価した。
これまで解散命令の請求に慎重な姿勢を示してきた公明党の高木政調会長も、「宗教法人法を適正に運用することは極めて重要だ。基準を明確に整理し、質問権を適正に行使してほしい」と理解を示した。
ただ、世論に押される形で指示を出したことに、自民党内からは「もっと早く判断すべきだった」(幹部)との声も漏れる。
旧統一教会と党所属議員との接点が次々と発覚して以降、政府や党の対応が後手に回ったことで内閣支持率の下落を招いたとの危機感からだ。
この日の衆院予算委員会では、質問に立った自民の萩生田政調会長は、冒頭で自身と旧統一教会との接点に触れ、「結果として教団の信用を高めることに寄与してしまったとの指摘を
真摯
(しんし)に受け止め、猛省しなくてはならない」と陳謝した。
一方、野党は、批判の手を緩めていない。
立憲民主党の岡田幹事長は国会内で、「3か月も半年も先送りし、ほとぼりが冷めるのを待つことにしてはいけない」と記者団に述べ、首相に調査にかける期限を明示するよう求めた。日本維新の会の音喜多政調会長も、記者団に「『検討、検討』で先延ばしにしていては、刻一刻と被害者が生み出される」とクギを刺した。
野党内では、首相の調査指示にも、「国会での追及を避けるため、『やっている感』を出し、時間稼ぎしているだけ」(立民幹部)と冷ややかな見方が多い。首相が調査の期限を示していないことで、「解散請求の無期限先送りになりかねない」(立民の山井和則・国会対策委員長代理)との批判もある。
与党内からも、「調査をしても、解散命令の請求までいかなければ、政府への批判が余計に高まりかねない」(閣僚経験者)と懸念する声が出ている。