スマホの速報で、自民党の石井準一参院議運委員長が、衆院予算委員会の17日の質疑について、「まったく緊張感がない。野党がだらしない」と述べたというニュースを見た。映画「男はつらいよ」で、渥美清さん演じるフーテンの寅が吐く、「それを言っちゃあ、おしまいよ」という決めゼリフを思い出した。
筆者も17日の予算委員会は、午前9時から午後5時までほぼ見た。その日の産経新聞朝刊は「今日から予算委。旧統一教会焦点」という見出しだったが、野党の立憲民主党は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に関する質問は意外に少なかった。
予算委員会の直前に、岸田文雄首相が宗教法人法に基づく「質問権」を行使することを決めたことが大きかったのだろう。これで、場合によっては教団の解散命令を裁判所に請求できる。
立憲民主党は出ばなをくじかれた形で、例えば、大西健介氏は「解散命令請求を前提に質問権を行使するのか」という質問を言い方を変えて何度も行い、解散命令請求の言質を取ろうとした。だが、岸田首相は「違法性と組織性がしっかりと確認されることが重要」と繰り返すだけで、「ラクに答弁してるなー」という印象だった。
また、「瀬戸際大臣」と呼ばれている山際大志郎経済再生担当相を徹底追及するということだったが、新しい話はなく、山際氏も拍子抜けだったのではないか。
冒頭の石井氏は「通り一遍の予算委員会で『瀬戸際大臣』のクビを取れるのか」とも語ったという。しかも、岸田首相らと都内の日本料理店での会食で、そういう話をしたと伝えられた。
これが本当なら、岸田首相は山際氏のクビを差し出す覚悟もあるが、「野党がだらしない」ので逃げ切れる自信を持っているということなのか。
岸田首相は翌18日の予算委員会で、石井氏の発言について、「(会食の)席で発言はなかったと確信している」と否定した。まあそうは言っても密室の会話ですしね。
石井氏は18日、記者団に「心からおわびする」と発言を謝罪して、撤回した。
岸田首相の国会答弁は、明らかに安倍晋三元首相や、菅義偉前首相よりうまい。安倍氏は時々、ムキになって野党を挑発したし、菅氏は言葉が少なすぎた。
それに比べて、岸田首相は「聞く力」を発揮して、丁寧に答える。だから就任当初、リベラル系メディアは「岸田びいき」だった。ただ、答弁を重ねるうちに、実は岸田首相は野党の話を聞く気はあまりないことがバレてしまったのだが。
この原稿を書いている18日午前も、岸田首相は丁寧に国会答弁を続け、質疑は淡々と進んでいる。これは「野党がだらしない」ではなく、「野党は攻めにくい」、すなわち「首相が手ごわい」のではないか。こういう首相が意外に長続きするのかもしれない。 (フジテレビ上席解説委員・平井文夫)