「1票の格差」が最大3・03倍だった7月の参院選は投票価値の平等を保障する憲法に反するとして弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決で、名古屋高裁(土田昭彦裁判長)は25日、区割りを「合憲」と判断し、請求を棄却した。原告側は即日上告した。
全国14の高裁・高裁支部に起こされた計16件の同種訴訟で、3件目の判決。大阪高裁と東京高裁は「違憲状態」としており、名古屋高裁が初の「合憲」判断となった。各地の判決は11月中に出そろい、最高裁が統一判断を示す見通し。
国会は格差是正のため2015年、「鳥取・島根」「徳島・高知」をそれぞれ一つの選挙区にまとめる「合区」を実施し、16年選挙は3・08倍まで縮まった。前回19年選挙は埼玉選挙区の定数を「2増」によって3・00倍まで縮小した。
最高裁は17年と20年の判決で、国会の取り組みを評価し、いずれも「合憲」とした。しかし、その後は格差を縮小させる具体的な方向性が示されておらず、今回の選挙では再び格差が広がる結果となった。
名古屋高裁判決は、国会が格差の是正や拡大させないための取り組みを進めるべきだと指摘。その上で、参院選の選挙制度改革を巡る議論などが重ねられているとして「格差是正の姿勢が失われたと断じることはできない」と述べ、著しい不平等状態にあったとはいえないと結論付けた。
判決後に記者会見した原告側代理人の升永英俊弁護士は「(「違憲状態」とした)東京高裁判決と同様に、格差の是正が未到達と(名古屋高裁の)判決も言い切っている。今回は条件付きの合憲判決だ」と述べた。原告の一人、内田隆さん(47)は「(国会が)準備や努力をしているから大丈夫というのは市民感覚で納得できない」と話した。
一方、愛知、岐阜、三重各県の選挙管理委員会は「主張に理解をいただいたと認識している」と、それぞれコメントした。【藤顕一郎】