中央アルプスで「絶滅」のライチョウ、80羽以上生存か 復活へ前進

中央アルプス(長野・岐阜県)で半世紀前に絶滅したとされるライチョウの環境省による復活計画が8月、動物園で飼育・繁殖した成鳥とヒナ計22羽の野生復帰に成功し、大きく前進した。2020年夏に北アルプス乗鞍岳(長野・岐阜県)から親子19羽を中アに移入して以降、現地で自然繁殖した個体を加えると、80羽以上が生存している可能性があるという。専門家は、24年に100羽程度に増やす目標の達成に自信を見せる。【武田博仁】
国の特別天然記念物で絶滅危惧種のライチョウの復活計画は、18年に北アから飛来したとみられる雌1羽が中アの木曽駒ケ岳で確認されたことを契機に始まった。中アに以前いたライチョウは、標本の分析で遺伝子の系統が北アと同じと分かり、20年に乗鞍岳から親子19羽を木曽駒ケ岳に移した。
21年には現地で自然繁殖して四十数羽に増え、一部を長野市茶臼山動物園と那須どうぶつ王国(栃木県那須町)に移して人工繁殖に挑戦。長野では繁殖に失敗したが、那須ではヒナ17羽が育ち、うち16羽を両動物園の成鳥6羽とともに山に返した。復活計画は、現地にいる個体の保護と動物園での増殖の2本立てで進められた。飼育したライチョウの野生復帰は国内初だ。
ヒナはふ化後1カ月の間に死亡するケースが多い。現地ではこの間、寒さや天敵から守るため、親子を夜間や荒天時にケージに入れて保護。テンなど天敵の捕獲も実施してきた。
10月9、10日に長野県駒ケ根市で開かれた関係者による「ライチョウ会議」で、経過を発表した信越自然環境事務所の小林篤・生息地保護連携専門官は「今年の繁殖期は現地にいた雌雄17組が縄張りを形成し、その範囲は木曽駒ケ岳から南部の南駒ケ岳までの中ア全域に広がった」と説明。野生復帰組も加え、繁殖後の8月上旬時点では、ヒナを含めて総数119羽を数えたという。
その後は減ったとみられるが、小林専門官は「少なくとも80羽以上が生存している可能性がある」と説明。野生復帰組については、9月末時点で少なくとも9羽の生存を確認したと報告した。計画の指揮を執る中村浩志・信州大名誉教授(鳥類生態学)は「5年計画で100羽に増やす目標は、24年にはほぼ確実に実現できそうだ」と評価する。
今回のように、野生復帰の成功は協力する動物園の貢献が大きい。日本動物園水族館協会のライチョウ計画管理者の秋葉由紀さんは「母鳥に抱卵や育すう(ヒナを育てること)を任せる野生に近い繁殖や、餌となる高山植物の栽培を始めた」と説明。今回の長野と那須の動物園では、ライチョウに高山植物を給餌し、高山植物の毒素の分解に必要な特有の腸内細菌もヒナに与え、野生に返す条件を整えた。
中村名誉教授によると、今年は現地に天敵が増え、4羽がキツネに襲われたという。ライチョウが増えれば、天敵も増える可能性がある。計画の成功には今後も繁殖技術の蓄積や天敵対策に取り組む必要がある。