交流サイト(SNS)で知り合った女子中学生を連れ回し、自殺を手助けしたとして、男が自殺幇助(ほうじょ)などの罪で起訴された事件は、誘拐発覚を恐れたことが動機になるなど経緯の詳細が捜査関係者への取材で浮き彫りになった。SNSに起因した事件で被害にあった県内の子供は昨年だけで190人を超えており、被害抑止に向けてリスクの周知や相談しやすい体制づくりが重要になってくる。(橋本愛)
9月24日、相模原市緑区の山中にかかる橋に野崎祐也被告(29)=さいたま市緑区=と中学生の姿があった。起訴状や捜査関係者によると、野崎被告は中学生の飛び降り自殺を手伝うために足を支えて手すりを越えさせ、欄干に立たせたとされる。
中学生はすぐには飛び降りなかったが、野崎被告は思いとどまらせることなく置き去りにしたという。その後、橋から飛び降りたとされる中学生の遺体は、29日、付近の河川で見つかった。
「自殺を考えている人は会いやすいと思った」。防犯カメラの映像などから特定され、県警に逮捕された野崎被告は、こう供述したという。1年ほど前からSNSで100を超えるアカウントにメッセージを送り続ける中で自殺願望をほのめかす中学生と接触した。
9月20日に東京駅周辺に呼び出して電車で移動し、さいたま市の自宅アパートに連れ込んだとされる。最寄り駅から徒歩5分程度にあるアパートは飲食店や生活用品店などが並ぶ通りに面し、周囲の人通りは多いが、23日夜に自殺場所に出発するまではほとんど外出しなかったとみられている。
自殺場所を提示したのは、野崎被告だったとされる。その理由について「自殺すれば(誘拐が)発覚しないと考えた」という趣旨の供述を行ったといい、捜査関係者は「被害者はまだ、中学生だった。大人に言われ、影響を受けた部分はあるだろう」とこぼす。
スマートフォンの普及とともに身近になったSNSで悪意のある大人と接触し、事件に巻き込まれる子供は後を絶たない。県警少年育成課によると、昨年、SNSに起因して、わいせつ目的などの事件で被害に遭った18歳未満の子供は県内で193人。最も多いのは高校生の122人で、中学生は60人だった。
同課の担当者は「子供たちは『誰かに話を聞いてほしい』、『気持ちに共感してほしい』という思いを持ってSNSに書き込んでいる。そこに寄り添う姿勢を見せて接触してくる者によって被害に遭ってしまう」と指摘する。
県警ではSNS上で不審な情報発信がないかサイバーパトロールをしているほか、学校などで事件に巻き込まれるリスクなどを伝える教室を実施している。同課担当者は「見ず知らずの人と会うことの怖さを知ってもらう必要がある」と訴える。