「ブラック部活動」などの著書で知られる名古屋大大学院の内田良教授が「学校のリスクを見える化する―部活動改革から働き方改革まで」をテーマに長崎市で講演した。内田教授は、長崎県内の私立高で部活顧問を務める職員の残業代請求訴訟で学校側が部活動指導などを「労働時間」と認めて和解したことを「非常に画期的」と評価し、公立校教職員の働き方にも反映させるべきだとの考えを示した。
講演会は12日、県教職員組合などでつくる「県教育を語る会実行委員会」が主催し、約100人が参加した。
学校現場の残業を巡っては、公立校の教員には教職員給与特別措置法(給特法)が適用され、基本給の4%が一律支給される代わりに残業代が原則支払われない。私学の場合は本来、労働基準法に基づき残業代が支払われなければならないが、公立に倣って基本給の数%だけを支払っているケースが少なくない。
教育社会学が専門の内田教授は、1971年の給特法制定により残業代が支払われなくなったことで教育界が時間とコストへの意識を失い、「定額働かせ放題になった」と指摘。部活は「教育課程外の自主的な活動」と扱われているために過熱を招き長時間労働につながっているとして、時間管理などの制度設計の重要性を強調した。そして、給特法について廃止を含め抜本的に見直すべきだとの考えを示した。
参加者からは、残業や休憩時間中の労働が反映されない形でタイムカードが記録されたり、教員不足で育児休業中の人が呼び出されたりしているといった現場の実態が報告された。【樋口岳大】