「王将」社長射殺 事件の「闇」どこまで迫れるか

9年前、社長はなぜ殺害されたのか。実行犯とされる男に犯行を指示した人物がいたのか。今後も捜査を尽くし、事件の闇を解明してほしい。
2013年12月、「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長が射殺された事件で、京都地検は、特定危険指定暴力団工藤会系組幹部、田中幸雄容疑者を殺人罪などで起訴した。
田中被告は、京都市内の王将本社の駐車場で早朝、当時社長だった大東隆行さんの胸や腹を拳銃で4発撃って殺害したとされる。
普段から従業員らが行き交う場所で社長が射殺された事件は、社会にも大きな衝撃を与えた。一般市民への理不尽な暴力であり、断じて許されない。
田中被告は、早い段階から捜査線上に浮かんでいた。事件現場近くでたばこの吸い殻が発見され、DNA型が被告のものと一致したからだ。ただ、いつ吸ったのかが特定できず、捜査は難航した。
今回、新しい方法で吸い殻を鑑定したところ、事件当日、雨にぬれた現場付近の路面で火が消えたと推定されることが判明した。大東さん宅周辺の防犯カメラには、被告の特徴と似た人物が収められていたことも解析で分かった。
科学の発展に伴う鑑定技術の向上が、被告の逮捕、起訴に結びついたと言えるだろう。
ただ、今後の裁判で事件の全容を解明することは容易ではない。被告と被害者の接点は明らかになっておらず、目撃者や凶器など犯行を直接裏付ける証拠もない。被告は黙秘を続けているという。
警察は共犯者がいたとみている。逃走用バイクの調達に複数の人物が関わった疑いがあり、周到な計画性がうかがえるためだ。
王将は過去、外部の企業グループとの間に200億円を超える不適切な不動産取引などがあったとされる。大東さんは事件前、取引の解消に尽力していたという。
一連の経緯が事件と関連があるのか、警察は裁判と並行して、捜査を進めなければならない。
工藤会が事件を主導したのかどうかも焦点になる。ただ、暴力団などによる組織犯罪の捜査は、事件に関わったメンバーから供述が得られにくく、難航しがちだ。
福岡県で市民が襲撃された四つの事件を巡り、福岡地裁の判決は21年、元組員ら延べ91人の証人尋問などから、工藤会の最高幹部が指揮したと認定した。
警察は、こうした手法も参考に、関係者に事情聴取を重ね、犯行の組織性を解明する必要がある。