日向海上保安署(宮崎県日向市)所属の巡視船「きりしま」(180トン)が25日、老朽化のため退役した。串木野海上保安部(鹿児島県いちき串木野市)の所属だった2001年に北朝鮮の工作船を追跡して銃撃を受けるなど、32年間の激動の任務を終えた。
きりしまは1991年に串木野海保で就役。2008年に宮崎海上保安部、11年には日向海保に移った。最近まで沖縄県尖閣諸島周辺の巡視などにあたった。総航行距離は地球16周分に相当する約64万キロ。耐用年数(20年)を過ぎ、船内の設備に不具合が目立ち始めたため、引退することになった。
01年12月に鹿児島県奄美沖で発生した北朝鮮の工作船事件で現場に出動。工作船が停船命令に応じず、至近距離から発砲を受けた。それでも他の巡視船3隻とともに追尾を続け、銃撃戦の末、工作船は自爆とみられる爆発で沈没した。
その際、きりしまは船体に40~50カ所の弾痕が確認され、一部はエンジンルームの配管にも到達。この事件で海上保安官3人が負傷した。他の巡視船3隻のうち「あまみ」「みずき」は南九州以外で活躍中。「いなさ」は20年6月に老朽化で退役した。
25日には日向市の細島港で解役式があり、池田栄作・日向海上保安署長は「被弾しながらも冷静かつ毅然(きぜん)と対応し、(工作船の)沈没まで追跡を続け任務を果たした姿は永遠に記憶に残る」と船体に語りかけ、長年の労苦をねぎらった。宮崎海保には12月に新造船の「きりしま」が就役する。【梅山崇】