東京五輪・パラリンピックのテスト大会事業を巡る入札談合事件で、東京地検特捜部と公正取引委員会は28日、新たに大手広告会社「博報堂」など4社を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で捜索した。特捜部が広告最大手の「電通」幹部らに対して任意の事情聴取を始めたことも判明。押収資料の分析と併せて全容解明を進める方針だ。
電通は25日に捜索を受け、同3位の「ADKホールディングス」側は公取委に違反を自主申告した。同2位の博報堂を含め、業界トップ3がそろって談合への関与を疑われる異例の事態となった。
特捜部と公取委は28日、大手広告会社「東急エージェンシー」、イベント会社「セイムトゥー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション」も捜索した。
談合の疑いがあるのは、大会組織委員会が2018年に実施した各競技のテスト大会を計画立案する業務の入札で、計26件が総合評価方式で行われた。受注したのは25日に捜索を受けた電通とイベント会社「セレスポ」、28日に捜索を受けた4社に、ADK側などを含めた計9社と一つの共同事業体だった。1件当たりの落札額は約6000万~約400万円で、落札総額は5億円余りに上った。
関係者によると、組織委側と電通は応札が見込める企業からの受注意向などを一覧表にまとめて共有し、一部の企業に伝達していた疑いが持たれている。計26件のうち十数件は1社しか参加せず、実際の受注はほぼ一覧表の通りだったという。
組織委には電通など落札企業の社員が出向していた。特捜部は、組織委側と電通が落札企業をあらかじめ決めていたとみており、電通幹部らから任意の事情聴取を実施。幹部らは談合の認識を否定したという。
特捜部と公取委は、本大会の競技運営などの受注も視野に談合が行われていた可能性もあるとみて調べる。
博報堂、東急エージェンシー、フジクリエイティブコーポレーションは28日、「捜査に協力する」とする一方、談合の有無については「コメントを控える」などとした。