同性婚認める法制度ないのは「違憲状態」 東京地裁判決

同性婚を認めていない現行制度は憲法に反するとして、同性同士の婚姻届が受理されなかった男女9人が国に1人当たり100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は30日、現行制度は個人の尊厳に立脚した法制度の制定を求める憲法24条2項に違反する状態と判断した。池原桃子裁判長は「どのような制度にするかは立法府に裁量がある」とし、直ちに違憲とはしなかった。国会が立法措置を怠ったとする原告側の主張も退け、賠償請求は棄却した。原告側は控訴する方針。
全国5地裁に起こされた同種訴訟で3件目の地裁判決。2021年3月の札幌地裁判決は「違憲」、今年6月の大阪地裁判決は「合憲」としており、「違憲状態」とする司法判断は初めて。
原告は東京都や沖縄県などに住む30~60代。9人のうち1人は提訴(19年2月)後に亡くなったため、パートナーの男性が訴訟を引き継いでいる。
憲法24条1項は「婚姻の自由」を保障し、同2項は婚姻や相続など家族に関する法律について「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」と定めている。原告側は訴訟で、同性婚を認めない民法と戸籍法の規定は24条の両項に違反するとともに、「法の下の平等」を定めた憲法14条にも反すると主張した。
判決は、同性婚に反対する人の割合は減少傾向にあるとしつつも、24条1項の「婚姻」は異性間を想定したもので、同性婚を認めないことが同項に反するとはいえないと指摘。ただし、パートナーと家族を形成することは人生に充実をもたらす極めて重要な意義があるとした。また、こうした個人の尊厳に関わる人格的利益は異性愛者も同性愛者も変わらないとし、同性愛者にパートナーと家族になる法制度がないことは「人格的生存に対する重大な脅威、障害」で、24条2項に反する状態だと言及した。
一方、婚姻が異性間に限られている背景には「夫婦となった男女が子を産み育て、次世代につなぐという古くからの人間の営みがある」とし、こうした価値観を一方的に排斥するのは困難とも指摘。同性愛者は婚姻で生じる法的効果を受けられない不利益があるとしつつ、民法と戸籍法の規定は性的指向に基づく差別とは言えず、14条には違反しないと結論付けた。【遠藤浩二】
東京地裁判決の骨子
・憲法24条の「婚姻」は異性間の婚姻を指し、同性婚を含むと解することはできない
・同性婚を認めない民法・戸籍法の規定は、性的指向に基づく差別に当たるとして「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反するとはいえない
・同性婚を認める法制度が存在しないことは、個人の尊厳に立脚した法制度の制定を求めた憲法24条2項に違反する状態
・法制度の構築は立法裁量に委ねられており、違憲と断じることはできない