3日午前0時10分ごろ、福岡県春日市春日原東町の路上で「首を刃物のようなもので刺された」と同市内に住む専門学校生の女性(21)から119番があった。県警春日署員らが駆けつけたところ、女性は首から血を流し、意識がもうろうとした状態だった。現場近くの路上では、事故を起こした車の中で血まみれの元交際相手とみられる、同県久留米市の20代男性が見つかった。2人とも意識不明の重体。同署が殺人未遂事件として捜査し、元交際相手と事件の関連を調べている。
春日署によると、女性は2月ごろから、男性にネット交流サービス(SNS)上で中傷を受けたなどとして同署に複数回相談。女性は9月に交際関係を解消したが男性とのトラブルは続き、10月中旬には男性から危害を加えるような言動があったと女性の親族から相談があった。つきまとい行為なども確認されたため県警は11月中旬、男性の弁明を聴く聴聞を実施。事件前日の12月2日、県公安委員会がストーカー規制法に基づく禁止命令を出したばかりだった。県警は一連の対応について「現時点ではコメントしない」としている。
現場で倒れていた女性は、首など上半身に複数の刺し傷があった。春日署員が見つけた現場は女性の自宅のすぐ近くだった。
一方、女性の119番の直後、現場から約500メートル離れた同県大野城市内の路上で「男性が運転する車が交通事故を起こした」と通行人から110番があった。署員らが駆けつけたところ、車はガードパイプに激突したような状態で大破し、中に血まみれの男性がいた。車内からは刃物のようなものも見つかったという。
女性が見つかった現場は西鉄春日原駅の南約400メートルの閑静な住宅街。現場近くに住む女性は「午前0時過ぎ、女性の『ギャ、ギャ』という痛そうな叫び声が聞こえた。十数分後に家の窓から外をのぞくと、マンションの駐車場に人が倒れ、救急隊の処置を受けて担架で運ばれた。静かな住宅街なのでびっくりした。女性の命が助かってほしい」と話した。
禁止命令から1~2週間が最も危険
女性は2022年2月以降、元交際相手の20代男性とトラブルになり、福岡県警春日署に繰り返し相談していた。県公安委員会はストーカー規制法に基づく禁止命令を出したが、その直後に今回の事件は起きた。
ストーカーなどの相談を多数受けているNPO「ヒューマニティ」(東京都)の小早川明子理事長は「禁止命令を受けた加害者は逆恨みや絶望から自暴自棄になるケースがあり、命令から1~2週間は被害者が最も危険。今回の事件は象徴的だ」と話す。対策として、警察は禁止命令が出る日を事前に被害者に知らせ、危険性を伝えた上でホテルなどに避難するよう指導することが求められるという。
また、警告時や聴聞時には医療関係者が同席し、加害者が衝動を理性で抑えられる状態か、精神疾患がないかなどを見極める仕組みが必要と指摘する。
春日署によると、今回は聴聞などを通じて、男性がなおもストーカーを続けたり、エスカレートしたりする可能性は低いと判断。禁止命令が出る日は女性に伝え、男性の家族には男性を監護するよう求めていた。ただ、禁止命令を受けた男性が反省しているように見えたことから、女性に一時避難を勧めることまではしなかったという。
ストーカー規制法では、加害者が禁止命令に従わなければ2年以下の懲役、または200万円以下の罰金に処せられることがある。ただ、21年11月に北九州市、22年1月には三重県四日市市で、禁止命令を受けていた加害者の相手方が刺殺される事件が発生。必ずしも抑止につながっていない。【河慧琳、佐藤緑平、土田暁彦、平川昌範】