髙山若頭出所まで“集中決戦” 山口県4トンダンプ特攻が発生

六代目山口組(司忍組長)の“指揮官”である髙山清司若頭の復帰まで、残り1カ月を切った。出所後は、さらなる体制固めに乗り出し、六代目山口組の懸案事項といえる分裂問題にも、大きな影響を与えることが予想されている。
「髙山若頭の出身母体・三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)は複数のヒットマンを出し、分裂戦の最前線に立ってきた。復帰によって再び武力行使に出るのか、政治的な動きで分裂問題に着手するのか、注目されるところだ。神戸山口組(井上邦雄組長)も慎重に出方をうかがった上で、何かアクションを起こすはずだ」(山口組ウオッチャー)

8月21日には、兵庫県神戸市における髙山若頭の邸宅が隣接した弘道会の“神戸拠点”で、部屋住み組員が銃撃される事件が発生。その約3週間後の9月9日には、六代目側・十一代目平井一家(薄葉政嘉総裁=愛知)本部に2発の銃弾が撃ち込まれた。いずれの事件も、犯人の行方はおろか特定にも至っていないが、髙山若頭の出所が迫ったタイミングで発生したため、業界内では神戸山口組による犯行との見方が根強い。

さらに、山口県でも六代目側が被害に遭う事件が発生。全国各地でくすぶっていた火種が、一気に発火し始め、“集中決戦”の様相を呈しているのだ。

9月18日の午後11時50分ごろ、六代目山口組の森尾卯太男本部長率いる大同会(鳥取)傘下組織の関係先に、4トンダンプカーがバックで突入。軒先の柱を破壊し、扉も損壊した。被害を受けたのは、これまでに事件が起きたような重要拠点や組事務所ではなく、大同会系傘下の山口県萩市にある最高幹部の関係先で、組織としてではなく個人が使用する場所だった。しかし、背景には神戸山口組との対立がうかがえ、不穏さが増したのだ。
「山口県では六代目側VS神戸側の小競り合いが起きとった。きっかけは5月上旬に大同会と二代目英組(藤田恭道組長=大阪西淀川)の関係者が衝突したことで、現地に神戸山口組の応援部隊が入ったんや。双方が直接対峙することはなかったみたいやけど、抗争の渦中やし、直系組織の最高幹部クラスも駆け付けたと聞くから、事態は緊迫しとったんやろ」(関西の組織関係者)

地元では、この問題が尾を引いていたのか、8月中旬には英組系組幹部が襲撃を受けたのである。
「飲み屋を出て大同会系組幹部を組員たちが見送ったところ、たまたま英組系組幹部らとカチ合ったらしい。『何をジロジロ見とんのじゃ』と双方が険悪な雰囲気になり、その場ではトラブルに発展しなかったが、当日、自宅前でその英組系組幹部が襲われたんや」(同)

山口県警が捜査に乗り出した矢先、双方が対峙する前に帰宅していたはずの大同会系組幹部が出頭。傷害容疑で逮捕されたが、その後、9月13日に釈放された。

報復開始は出所後か
今回、ダンプカーが突入した場所は、この組幹部が所属する大同会直系組織の最高幹部の関係先だった。ダンプカーを運転していた人物も出頭しており、警察当局は事件の背景にはこれまでに起きた衝突も無関係ではないと見ているようだ。
「被害を受けた場所は土地勘がないと行けんとは思うけど、組織と直接関係のない、ただの倉庫や。出頭した男かて組員やなく一般人なんやで。分裂問題に関わる対立抗争いうわけやなく、あくまで地元でのゴタなんと違うか」(ベテラン記者)

確かに、9月20日の彼岸墓参(詳細後述)に現れた森尾本部長は、穏やかな表情を見せていた。当日は総本部で執行部会が開かれ、墓参を終えた森尾本部長も出席。緊迫した雰囲気は一切感じられなかった。
「それよりも、弘道会による返しのほうが現実味があるやろ。神戸拠点での銃撃から1カ月経つのに報復攻撃に打って出ないのは、水面下で準備を進めとるからなんやろか…」(同)

業界内では、五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)の與則和若頭が、弘道会系組員によって刺された事件(4月18日)の報復だったと囁かれた。犯人逮捕には至っていないが、当の弘道会も怒りの矛先は山健組に向けているといわれる。それにもかかわらず報復が起きない現状は、不気味さをいっそう際立たせた。
「そりゃ抗争中なんだから、準備は進めているだろう。けどな、もうすぐ髙山若頭が戻ってくるのに事を起こしたら、混乱の中で迎えることになる。それを避けるためにも、今は沈黙を守っているのかもしれん。これまでに弘道会のヒットマンたちが引き金を引いたタイミングを見ると、神戸山口組側の動きに影響を与えるようなやり方をしている。
池田組(池田孝志組長=岡山)の髙木昇若頭が撃たれたのは、六代目側への切り崩しを活発に行っていたからといわれ、元山健組関係者が射殺された名古屋での事件も、弘道会の本拠地で威信を示すためだったとみられた。今回も、神戸側に最も影響を与えるような時期を狙っているように思える」(事情通)

つまり、反撃開始は髙山若頭の出所後となる可能性が高いという。逆に神戸側にしてみれば、それまでは隙を突く機会を得られることにもなるのだ。
「リスクも増してくるから、一概に“好機”とは言えないだろう。ただ、敵意を示す意味で今後も事件が起きることは予想される」(同)

神戸発砲で組員の指紋検出
当局が全面衝突を危惧する中、業界に衝撃を走らせた神戸銃撃事件の捜査に進展が見られたという。
「兵庫県警は犯行に使われた可能性のあるバイクを2台押収しとって、1台に残された物から組織関係者の指紋が検出されたんや。バイク押収の数日後には判明しとったらしいが、県警も慎重になっとるから詳細をひた隠しにしとったようや。一部報道では『対立する組員の指紋』と報じられとるから、神戸山口組やと誰もが思ったやろな」(地元記者)

しかし、指紋が検出された組員がヒットマンだったとは、断定できないようだ。ある他団体幹部が言う。
「業界内外に流出した防犯カメラの映像では、犯人は手袋をしているように見えた。まあ、バイクにも指紋が残るから素手だったとは考えにくい。それなのに、指紋が検出されたのはおかしくないか? 犯人が追跡をかわすため、計画的に偽装したかもしれん。指紋が出れば、いったん捜査の目はそこに向くからな。バイクを乗り換えて山健組本部の至近距離で乗り捨てた不自然さもあって、逃亡の時間稼ぎに思えてならん」

指紋検出は事件直後だったにもかかわらず、県警が逮捕に至っていない現状からも、証拠として決め手に欠けることがうかがえた。
「そもそも、押収したバイクかて、犯行に使われたものかどうか断定できとらんのやろ。それだけ用意周到な計画やったいうことでもあるで」(前出・地元記者)

一方、8月20日に長野県飯田市で発生した弘道会・野内正博統括委員長率いる野内組傘下三代目近藤組組長への“拉致暴行事件”で、長野県警が逮捕に動いた。9月18日までに任侠山口組(織田絆誠組長)傘下組織に所属する二代目百瀬組組長ら計9名が、逮捕監禁致傷容疑で逮捕されたのだ。

うち3人は事件発生の翌日に逮捕されており、県警は9月18日、百瀬組の上部団体で松本市内にある四代目竹内組(宮下聡組長)本部への家宅捜索を実施。事件に関わったとみられる全員の逮捕に至ったようだ。
「飯田市では分裂直後に射殺事件が起き、百瀬組は当時、進攻していた百瀬雅樹組長(現・二代目金澤組組長)が初代になる。任侠発足後は野内組と竹内組の対立が激化していたから、任侠山口組の怒りが限界に達した結果ではないか。3つの山口組がシノギを削る大阪でも今後、同じことが起きかねない。それだけではなく野内組の進攻は関東にも及んでいて、各地で危ない状況が続いているといわれる」(地元関係者)

9月18日には、六代目山口組・二代目浜尾組(浜田重正組長=兵庫神戸)本部で、関東ブロック直系組織の若頭らが集まり、会合を行っていた。連携が再確認され、髙山若頭の出所に向けて結束を強めた模様だ。
「分裂後、関東で殺人事件は起きていないが、敵対組織が存在する以上、常に火種を抱えているのは他の地域と同様だ。それに備えておく必要があるのだろう」(関東の組織関係者)

神戸銃撃、平井一家本部への発砲、大同会の関係先に対するダンプ特攻と、立て続けに六代目山口組側が被害に遭う事件が起きた背景には、いったい何があるのか。“キーマン”髙山若頭の出所を目前に控え、緊張はピークに達している。