「極めて不十分だ」。判決後に長崎市内で開いた記者会見で、原告弁護団の在間秀和団長は強い口調で長崎地裁判決を批判した。
判決は、原爆放射線の影響で「健康被害が生じる可能性がある者」が「被爆者」であるとの考えを示しながら、被爆2世については「可能性が否定できないというにとどまる」として、2世への援護措置を講じていない国の姿勢を追認した。原告弁護団の中鋪(なかしき)美香弁護士は「『可能性がある者』と『可能性があるにとどまる者』との違いが明示されていない」と疑問を呈した。
弁護団の足立修一弁護士は「被爆者援護法には『被爆当時生まれていた人』が適用対象だとは書いていないのに、判決は被爆2世が生まれていなかったことを理由に権利を認めなかった。条文に書いていないことを持ち込んで2世を切り捨てたのは許せない」と語った。
原告団長の崎山昇さん(64)=長崎市=は「不当判決だ」と失望を明らかにしたが、判決が遺伝的影響の可能性を「否定できない」とした点にわずかな光を見いだし「被爆2世に対する援護に道を開いていくために、引き続き頑張っていく」と決意を語った。控訴するかについては「検討する」とした。
原告で「長崎県被爆二世の会」会長を務める丸尾育朗さん(75)=同県諫早市=は膵臓(すいぞう)がんになって闘病中で「一年、一年の命。死ぬまで頑張る」と決意を語った。
丸尾さんは2018年に膵臓がんの手術を受け、21年1月に再発が判明。長崎の爆心地の南約4・5キロで被爆した母も90歳になって膵臓がんが見つかり、11年に苦しみながら逝った。丸尾さんは「自分の病気の原因も母の放射線被ばくではないか」と疑う。
丸尾さんは今も抗がん剤治療を続け、52キロあった体重は40キロにまで減った。原爆放射線の遺伝的影響の「可能性」を認めながら請求を退けた判決に「『裁判所はここまでしか言えない。後は皆さんが(運動で)頑張ってください』ということだと思う。一生闘い続けたい」と語気を強めた。
長崎地裁には、23年2月7日に広島地裁で判決が予定されている広島訴訟の原告で、広島県被爆二世団体連絡協議会事務局長の角田拓(かくだたく)さん(59)=広島市東区=も駆け付けた。角田さんは「被爆2世は健康不安や差別などの実体験を元に訴訟を起こしている。広島訴訟では、2世の置かれた立場に理解を示す血の通った判決が出てほしい」と語った。
厚生労働省の担当者は、取材に「国の主張が認められたと認識している」と答えた。【高橋広之、松本美緒、平塚雄太】
「疑問が残る判決」
被爆者援護に詳しい田村和之・広島大名誉教授(行政法)の話 判決は原爆放射線の遺伝的影響の可能性を否定できないと判断したが、そうであるならば、被爆2世対策を促す付帯決議をしながら立法措置を何もしていない国会や、内閣の責任は問われなくてもいいのか。疑問が残る判決だ。