佐渡で進むトキ放鳥、本州側では計画断念へ…「田を荒らすおそれ」農家の懸念根強く

国の特別天然記念物トキを本州で定着させる環境省の放鳥事業で、候補地選定に応募し、「継続審議地域」とされていた新潟県と長岡市など県内5市町村が計画を断念する方向で調整していることがわかった。新潟は放鳥事業が唯一行われている佐渡島を有する「先進地」だが、基幹産業の稲作への悪影響を懸念する農家らから厳しい声が相次いでいた。
同省は5~6月、トキを再び本州などにも定着させようと、将来の放鳥候補地となる「トキの野生復帰を目指す里地」を公募した。県は意欲を示した長岡市や柏崎市、出雲崎町、刈羽村、弥彦村と組んで候補地に応募し、一部の農業、林業団体には事前に説明した。
だが、応募後、候補地内の農家らが反発。水田周辺はトキの餌場で、イネが踏み荒らされたり、餌となる虫などを育むために農薬、化学肥料の使用が制限されたりする「負担増」を懸念する声が続出した。
こうした状況を踏まえ、同省は8月5日、応募3地域のうち、石川県の能登半島と島根県出雲市を放鳥候補地とした一方、県内を「継続審議」にとどめた。
当時の山口壮環境相は記者会見で「選定要件はおおむね満たしており、地元の合意形成次第だ。しっかり調整して」と注文をつけた。
県によると、当該地域の農家は農薬や化学肥料の使用を減らす取り組みを実施済みで、水田などで更なる削減を行う必要はないとみられる。あぜ道の管理で散布される除草剤も規制はしない方針だ。
だが、農家の間では「自主的に削減し、手で草刈りをするよう『無言の圧力』がかかるのでは」といった「疑念」が根強い。長岡市で8月12日、県や市の担当者が出席して開かれた意見交換会でも「トキが田を荒らすおそれがある」「除草剤を散布できなくなる」など、地元農家らから厳しい意見が出た。
淡い桃色の美しい羽を持つトキだが、イネを踏み荒らす「水田の害鳥」として扱われて数を減らし、2003年に国内最後の個体が死んで絶滅した経緯がある。
県の担当者は「農家の不安を

払拭
(ふっしょく)できなかった」と打ち明ける。県は年内に5市町村と最終調整をした上で、同省に正式に応募の取り下げを伝える見通しだ。同省の担当者は「トキの保護増殖に長年携わってきた新潟への期待は大きいが、地元の合意なしには選定できない」と語った。