長崎の爆心地から12キロ圏内で原爆に遭いながら被爆者健康手帳が交付されない被爆体験者が救済を求める活動が15日、長崎市と東京であった。被爆体験者や支援者たちが「国は被爆体験者を被爆者と認めよ」と声を上げた。【樋口岳大】
長崎市では、被爆体験者らでつくる「長崎被爆地域拡大協議会」が集会を開き、県保険医協会会長の本田孝也医師が講演した。厚生労働省が被爆体験者の医療費助成に7種類のがんを加える方針を示したことについて、本田医師は「被爆体験者ががんになったのは放射線被ばくが影響したと考えるのが合理的。7種類のがん追加は厚労省の時間稼ぎでしかない」と指摘した。
被爆体験者について同省は原爆放射線による健康被害は認めず、医療費助成は「被爆体験による精神的要因に基づくもの」として精神疾患と合併症に限定してきた。
同省は1日、2023年4月から胃がんなど7種類のがんを助成対象に加える方針を示したが、本田医師は「そもそも被爆体験者が精神的影響で病気になったという理屈に無理がある」と指摘。「がんを認めるなら、もっと早く、すべてのがんを認めるべきだった。今更一部だけ認めるのは、広島原爆の黒い雨体験者を被爆者と認めるのに、長崎の被爆体験者は認めないという問題から議論をそらすためでしかない」と語った。
長崎総合科学大名誉教授の大矢正人さんは「がんが認められる人と認められない人の分断、広島と長崎の分断という二つの分断を解決することが重要だ」と話した。
厚労省に要請
東京では、被爆者手帳の交付を求めた訴訟を長崎地裁で係争中の原告団が、厚労省の担当者に根本解決を求める要請書を提出。現行の医療費助成制度の対象に7種類のがんを加える同省の方針について「『被爆体験者の健康不良の原因は精神的影響』との考え方に固執している」と批判した。
原告団によると、同省は7種類のがん追加の他、県外への転出者にも助成対象を広げる方針などを説明。原告の山内武さん(79)=諫早市=は「7種類のがん追加は前進だが、私たちが目指しているのはそこではない。被爆体験者を被爆者と認めない限り、根本解決にならない」と話した。