アスベスト(石綿)が原因で肺がんを発症した北九州市の70代男性が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、福岡高裁であった。賠償金の利息に当たる遅延損害金の起算日が「労災認定日」か、それより前の「医師の診断日」かが争われたが、西井和徒(かずと)裁判長は「確定診断日が損害発生日」と判断し「労災認定日」と主張する国の訴えを全面的に退けた。
石綿の健康被害について、国の責任を認めた2014年10月の「泉南アスベスト訴訟」の最高裁判決以降、国は訴訟で和解に応じているが、遅延損害金の起算日は労災認定日としている。今年3月の1審・地裁小倉支部に続き、9月の神戸、広島地裁でいずれも「診断日」を起算日とする判決が出ているが、高裁での判断は初めて。全国の同様の訴訟に影響を与える可能性がある。
男性は1960~96年、北九州市門司区の石綿工場で石綿スレートの製造に従事。08年9月に肺がんと診断され、同年11月に手術(確定診断日)、10年2月に労災認定を受けた。1審判決は診断日を起算日としたが、西井裁判長はこの時点は「まだ肺がんの疑いという診断にとどまる」とし、手術を受けがんと確定診断された時点を起算日と判断。賠償額は1審と同じで、国に計1265万円の支払いを命じた。
遅延損害金は、損害が発生した日(起算日)から賠償金が支払われた日までの利息で年5%。起算日が早まれば受け取れる額は増える。判決後、男性は「患者も高齢化している。判決を国は真摯(しんし)に受け止めてほしい」と訴えた。
厚生労働省によると、泉南アスベストの最高裁判決以降、今年8月末までに1598人が提訴し、1158人との間で和解が成立している。同省は「今後判決内容を精査し、関係省庁と協議しつつ対応を検討したい」とコメントした。【宗岡敬介】