2019年4月に起きた池袋暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さん(36)をネット交流サービス(SNS)上で中傷したなどとして、侮辱罪などに問われた愛知県扶桑町の無職、油利潤一被告(23)の公判が19日、東京地裁(安永健次裁判官)であり、被害者の松永さんが「何とか妻と娘の命を意味あるものにしようと、必死に生きてきた。それらの思いを全て踏みにじられた気持ちになった」と意見陳述した。
事故で妻真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)を亡くした松永さんは、交通事故被害を減らすための活動に取り組んでいる。油利被告は今年3月11日、松永さんのツイッターの投稿に返信する形で「金や反響目当てで、闘ってるようにしか見えませんでしたね」「そんな父親、天国の莉子ちゃんと真菜さんが喜ぶとでも?」などと投稿したとして起訴された。
松永さんは意見陳述で「愛する人を侮辱されることは、自分のことを侮辱されたこと以上に傷ついた。(被告には)『命の大切さ』『言葉の重さ』をよく考え、心から謝罪できるような人になってほしい。人の痛みが分かるような人間になるための機会を司法の手で作っていただきたい」などと訴えた。
油利被告は8月に無差別殺傷事件を起こすと示唆する投稿をして警察に警戒させたとする偽計業務妨害罪にも問われ、検察側は侮辱罪で拘留29日、偽計業務妨害罪で懲役1年を求刑。弁護側は侮辱罪は成立を争い、業務妨害罪は執行猶予付き判決を求めて結審した。判決は23年1月13日。
松永さんは閉廷後に記者会見し「(意見陳述には)被告の更生と、誹謗(ひぼう)中傷の抑止力になってほしいという二つの願いを込めた。批判と誹謗中傷は違う。全てを網羅するのは不可能と分かっているが、国には何が誹謗中傷にあたるのかガイドラインを作ってほしい」と要望した。【志村一也】