回顧2022 岸田首相にダイナミックな戦略構想なし 財務省の思惑通りの「防衛増税」 核抑止にも触れず異様な「引きこもり」ぶり 福井県立大学教授・島田洋一氏

冷戦を勝利で終わらせた功労者の一人、ロナルド・レーガン元米大統領は「力を通じた平和」をスローガンとした。「力」の中心要素は「経済と軍事」であり、経済活性化と軍備充実を同時に推進せねばならないというのがレーガン氏の信念であった。
レーガン氏は、減税、規制緩和で経済を成長させ、自然増収を軍事費増に当てることを目指したが、成長政策の効果はすぐには出ない。当面は国債発行でしのいだ。
一時的に財政赤字が膨らんだが、やがて成長の果実によって国債は償還された。先端テクノロジーの禁輸や、無理な軍拡で追い詰められたソ連は、その間に崩壊した。
財務省の思惑通り、経済成長を妨げる「防衛増税(岸田増税)」を打ち出した岸田文雄首相には、こうしたダイナミックな戦略構想がない。
政府が、長射程ミサイルを装備した潜水艦の保有方針を固めたことは評価できる。発見されにくい潜水艦は、反撃力すなわち抑止力の中心的要素である。
私自身は日本も、潜水艦発射ミサイルに核弾頭を搭載し、「連続航行抑止」と呼ばれる英国型の独自核抑止力を備えるべきだと考えている。
英国の場合、スコットランドの基地を母港とする戦略原潜4隻が、それぞれ16基のトライデントⅡミサイルを搭載し(=1基当たり核弾頭3発を装備できる。4隻合わせて約200カ所の目標を攻撃可能)、常時1隻は外洋に出るシステムを維持している。ちなみにフランスもほぼ同様の核抑止システムを採っている。
中国とロシア、北朝鮮の「核の脅威」が高まるなか、岸田首相は「独自の核抑止力」はおろか、米国との「核共有(核シェアリング)」や、非核三原則の「持ち込ませず」の見直しすら、考えない姿勢を維持している。
「防衛力を考える有識者会議」の報告書も、岸田首相の意向を受けて核抑止に触れなかった。厳しい国際状況に照らして、異様な「引きこもり」ぶりという他ない。
一方で岸田首相は、誰が考えても無意味な「核兵器のない世界」実現の道筋について議論する「国際賢人会議」などの核廃絶パフォーマンスに時間と国費を浪費している。
第1回会議では、ロシア代表が「ウクライナを核で威嚇している事実はない」と強調するなど、無意味を通り越して、ウラジーミル・プーチン大統領のプロパガンダに手を貸す結果となっている。直ちに中止すべきだろう。
岸田首相は、議長国として来年5月に広島で開催するG7(先進7カ国)首脳会合で、核軍縮に関する何らかの合意を「成果」の1つに位置付けたい意向を示している。
自由主義圏の代表が集まるサミットで、何より討議すべきは「核を含む抑止力の強化」である。そして、常に意識すべきは中国共産党政権を崩壊に導く戦略である。
しまだ・よういち 福井県立大学教授。1957年、大阪府生まれ。京都大大学院法学研究科博士課程修了。専門は国際関係論。同大助手などを経て現職。北朝鮮による拉致被害者の支援組織「救う会」副会長。著書に『3年後に世界が中国を破滅させる 日本も親中国家として滅ぶのか』(ビジネス社)、『アメリカ解体 自衛隊が単独で尖閣防衛をする日』(同)など多数。