キオスクの前を通ったら『自民ヤラセ』の文字が。ヤ、ヤラセ!? 一体何があったのだ。
これは「日刊ゲンダイ」の『増税反対は“ヤラセ”』という記事だった(12月13日付)。
「国民の目を本質からそらさせるマヤカシ」
岸田首相が表明した「防衛大増税」に対し、“身内”のはずの自民党議員から「増税するな!」と批判が続出。しかしゲンダイ師匠は「だまされてはいけない。そもそも、この騒動自体が“ヤラセ”の可能性があるのだ」と叫ぶ。
《そもそも、周辺諸国を刺激し、軍拡競争になりかねない防衛費倍増が本当に必要なのか否か、議論は尽くされていない。なのに「防衛費倍増」を大前提にして「増税やむなし」「増税はダメ」とやり合うのは、議論のスリ替えに他ならない。国民の目を本質からそらさせるマヤカシだろう。》(ゲンダイ師匠)
だからヤラセと言っているのだ。ではもう一つのタブロイド紙「夕刊フジ」は同じ日になんと書いていたのか。
『岸田増税 閣内批判続々』
である。ここであらためてゲンダイとフジの論調を味わいたい。
岸田政権になってからタブロイド紙に「異変」を感じると今年の年明けから私は書いてきた。それまでの安倍・菅政権の頃は、日刊ゲンダイは政権批判であり、夕刊フジは政権支持&野党批判が売りだった。ところが岸田政権になってから夕刊フジも岸田批判が多くなり、“ゲンダイからもフジからも叩かれる岸田”という構図になったのだ。
安倍推しだった夕刊フジや保守コア層からすれば、岸田は自民党内ではリベラルだから好ましくない、という図式が誕生した。こうした点を頭に入れておくと、実は今回の防衛費増税報道も一般紙よりタブロイド紙を見比べたほうが「視点」がわかりやすくなる。
高市早苗も反発した動きを見せたが…
たとえば高市早苗経済安保相が岸田首相に反発した動きがあった。高市氏は増税案に対して「このタイミングで発信された総理の真意が理解出来ません」などツイッターでいろいろ述べた。
この高市氏の動きを『防衛増税 止まらない岸田罵倒』(12月14日付)とゲンダイは報じたが、翌日には『“高市の乱”早くも腰砕け』。『存在感アピールも不発』『誰もついて来ない』という見出しも(12月15日付)。
さらに翌日の一面は『安倍後継アピール 醜悪』。横には萩生田政調会長、西村経産相、高市経済安保相の3人の顔写真を並べていた(12月16日付)。
そして『防衛増税決定 萩生田逃げた』(12月17日付)。
“萩生田逃げた”ってまるで旧統一教会問題を思い出すが、増税反対論を展開していたはずの萩生田氏が「逃げた」じゃないかという見出し。自民党税制調査会が法人税など3税を増税する方針を固めたことについてだ。一方、増税時期は「あいまい」にしたので萩生田氏は最初からこの結末を分かっていたのではというツッコミでもある。
つまりゲンダイは高市氏にしろ萩生田氏にしろ増税反対を言うが、それは安倍後継を狙ったアピールだよねという視点だった。
財務省に洗脳されている?
一方の夕刊フジは同じ頃に何を主張していたのか。
『「岸田増税」財務省の思惑 洗脳か』(12月17日付)
こちらも叫んでいた。岸田は増税派の財務省に洗脳されているというフジ師匠。その下には『安倍元首相の遺志「防衛国債」を排除』という見出しがあった。生前の安倍氏は防衛費財源について「国債」を主張していた。安倍氏亡き今、安倍派の有力議員がそれを口にしている流れがわかる。そして「岸田は財務省に洗脳されているのだ」と安倍推しのメディアが書くのもわかる。
ここまで並べてみただけで同じ“岸田批判”でもゲンダイとフジには微妙な、いや、かなり大きな違いが見えて面白い。
“防衛費倍増の是非を議論しないで財源論議で激突しているように見せるのはヤラセだ”というゲンダイ師匠と、“安倍元首相の遺志(防衛国債)を継がずに岸田は財務省の言いなりになりやがってけしからん”というフジ師匠。この視点の違いを読み比べておきたい。
岸田首相は「拙速」ではなく「姑息」だった
では一般紙での岸田首相について気になる記事を見てみよう。先週いろいろ読んだ中で注目した箇所があった。それは12月16日(金)の『防衛増税 拙速のツケ』(朝日新聞)の次の部分。
《首相は昨年10月の衆院選直後、関係が近い党幹部に伝えたという。「総裁選もないこの期間を使い、防衛費の財源を固めて増税の話をする。今しかない」 参院選も大勝し25年まで国政選挙をする必要がなくなった首相は、いとこで税調会長の宮沢氏と歩調を合わせ増税に向かい始めた。》
この通りなら岸田首相は昨年秋から「防衛費と増税」については参院選後や国会閉会後のタイミングを狙っていたことになる。岸田首相は「ブレる」と言われるが(私も言ってきた)、今回はこの時期を前から狙っていたのか。だとしたらこの狙いに関してはブレていなかったことになる。
でも、防衛費増額が信念なら最初から堂々と言えばいい。岸田首相は夏の参院選までは静かにしていて、選挙後や国会を閉じた後に狙ったように言いだした。議論を避けた。正月が来たらみんな忘れると思っているのだろうか。今回の岸田首相の進め方は「拙速」とよく書かれるがこれは姑息と書いたほうがよい。
さて、私がもうひとつ注目したいと思っているのは今回の防衛費増額について「日経、読売、朝日」が何を書いてきたかである。というのも政府の「防衛力強化を検討する政府の有識者会議」に日経、読売の幹部や朝日のOBが入っていたからだ。あらためて紙面を読み比べてみるのも必要では?
(プチ鹿島)