長崎の世界遺産「潜伏キリシタン集落」、シカやイノシシの獣害で景観崩落…対策追いつかず

世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の全12構成資産のうち、長崎県内の5資産で、教会周辺の土が掘り返されたり、石積みが崩落したりする被害が相次いでいることがわかった。野生のイノシシやシカに起因するとみられ、各自治体は遺産の保護と景観保全の両立に向けて対策の検討に乗り出している。(丸山一樹)

被害が出ているのは、「野崎島の集落跡」(小値賀町)、「久賀島の集落」(五島市)、「黒島の集落」(佐世保市)、「

外海
(そとめ)の大野集落」(長崎市)、「外海の出津集落」(同)の5資産。
このうち定住者がいない小値賀町・野崎島では、畑跡や旧野首教会周辺の石積み数か所が最大幅約15メートルにわたって崩落。町教育委員会はシカやイノシシが石積みをつつき、風雨などの影響も受けて崩れ落ちたとみている。
五島列島の五島市・久賀島では、旧五輪教会堂につながる幹線道路沿いでのり面や石積みが崩れ、道路に散乱。島内をレンタカーで移動する観光客も多く、事故の危険性も指摘されている。イノシシの捕獲に取り組む坂本泰蔵さん(72)は「島全体で年間200頭から300頭は捕まえているが、繁殖能力が高く、追いつかない」とため息をつく。
佐世保市の離島・黒島では、黒島天主堂の敷地内にある花壇が掘り返される被害が初めて確認された。市教委の担当者は「イノシシの侵入を防ぐ柵で花壇周辺を囲う対策も考えられるが、カトリック信者が日常的に利用する信仰の場であり、設置は難しい」と漏らす。
大野教会堂周辺の石積みが崩れた長崎市の大野集落でも柵の設置が検討されてきたが、住民や観光客の安全性や景観保全への影響を懸念する声が上がる。近くの出津集落では、キリシタン墓地の敷地が掘り返されているのが確認された。