「宗教2世の声をくんでくれた」「周囲の大人も配慮を」――。厚生労働省は27日、宗教を背景とする児童虐待対応の指針を公表した。子どもに対する信仰の強制などを虐待と明示したことに、多くの2世当事者から評価の声が上がった。周囲に気付かれにくいケースも多いとみられ、子どものSOSをすくい上げる態勢作りが求められている。
ベルトで尻たたかれ「滅ぼされる」
祖父母の代から、キリスト教系新宗教「エホバの証人」の信者だった夏野ななさん(仮名)は「宗教に関係した虐待に初めて踏み込んでくれた。声をくんでくれてうれしい」と毎日新聞の取材に話した。
夏野さんは3歳の頃から週3回、集会に通った。ノートへの落書きや居眠りが見つかると父に廊下へ連れ出され、服を脱がされて尻を平手や革製のベルトでたたかれた。「たたいてしつけないと子どもも親も滅ぼされる」と父は力説した。中学生になっても、それは続いた。
漫画やアニメは「世の書籍」だと言われ、禁止された。読むのが許されたのは教団の出版物や新聞だけ。周囲の友達がアニメ「セーラームーン」のキャラクターになりきって遊んでいても、意味が分からなかった。
新聞を読んでいたから、読み書きはよくできた。友達が国立大の付属中学を受験すると聞き、自分も中学受験を望んだが、「宗教活動に割く時間が減る」との理由で認めてもらえなかった。
「宗教活動が中心の生活は何も楽しくなかった」と夏野さんは振り返る。10歳の頃には同居していた叔母も家を出て、父と2人きり。暴力を振るう父が嫌いで、中学生になると友人の家に泊まるなど家出を繰り返した。集会への参加を拒むたびに、父にむちで打たれた。「お前のためだ」と言われたが、うわべだけの言葉にしか聞こえなかった。
警察に保護された時、父の暴行や宗教活動の強制を訴えたこともあったが、相手にしてもらえなかった。
今回の指針は宗教活動中であっても、子どもをたたいたり、むちで打ったりする行為を「身体的虐待」と明示。子どもを脅すなどして進学を認めないことも「心理的虐待」に当たると指摘した。
夏野さんは「宗教2世の子どもの訴えはこれまで届きにくかった。周囲の大人は指針を参考にして、SOSを発する子どもがいたら耳を傾けてあげてほしい」と話す。
教会通い、恐怖で嫌と言えず
母が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者だった関東地方の女性(40代)も「これまで宗教は踏み込みづらい問題と考えられてきたが、社会が変わってきたことを心強く感じる」と喜んだ。
母に促され、中学生の頃から教会に通った。「言うことを聞かないとこの家で暮らしていけなくなる」と恐怖を感じ、嫌とは言えなかったという。
女性は母から「迫害されるかもしれないから、教会のことを他の人に言ってはいけない」と言われて育った。それだけに、「自分の状況を打ち明けられない子どももいるだろう。相談窓口などを周知するのも大事だ」と指摘する。
一方で、女性は宗教2世の子どもたちが偏見にさらされることも懸念する。「さまざまな問題が明らかになってから、旧統一教会への風当たりが強くなった。教師や周囲の大人は子どもたちを傷つけることのないよう、十分配慮してほしい」と求めた。【高良駿輔、宮川佐知子】