山形県鶴岡市西目で昨年12月31日に発生した土砂崩れの現場で2日朝、男女2人の遺体が見つかった。悪天候の中、捜索作業は50時間以上に及んでいた。土砂崩れで倒壊した住宅に住む80歳代男性と70歳代女性の夫婦が行方不明となっており、県警は、見つかったのはこの夫婦とみて身元の確認を進めている。
土砂崩れは31日未明、同市西目の住宅などの裏山で発生し、高さ20~30メートル、幅100メートルの範囲で崩落。警察、消防、自衛隊などが捜索にあたった。
50時間以上の捜索の末、2日朝、2人の遺体が相次いで見つかった。同市によると、いずれも3メートル下の土砂の中に埋もれた状態だったという。
この日、現場を視察した同市の皆川治市長は、「人命救助に最善を尽くして、自衛隊、消防、警察の皆さんが徹底して対応してきたが、本当に無念の思いだ」と話した。
鶴岡市西目で起きた土砂崩れ現場での救出作業は過酷を極めた。
一報が入ったのは大みそかの未明。通行人から「家が倒壊している」と110番があった。午前3時半頃、倒壊した家屋から70歳代男性と60歳代女性を救助。しかし、別の倒壊した住宅に住む80歳代男性と70歳代女性の夫婦とは連絡が取れなかった。
現場は、県道沿いで小高い山の麓にある一帯だ。土に押し流された住宅は原形をとどめず、そこに住宅や道路があった姿は想像できないほどだった。
捜索は警察、消防、自衛隊などの総勢約600人が、昼夜休むことなく続けた。
31日午後には、次第に曇り始め、風が強まり日暮れとともに寒さが増した。投光器が現場を照らし、重機でがれきを慎重に取り除く作業が繰り返される中、年が明けた。
元日は一段と寒さが厳しくなり、雨や
雹
(ひょう)が強まった影響で、赤土がむき出しになっている斜面では時折、土が崩落。カメラのファインダー越しに見える活動中の隊員からは、緊張と険しさが伝わってきた。
土砂の中からは、潰れた白い軽乗用車や布団などが撤去され、平穏な生活が一瞬で奪われたことが感じられた。
2日朝。厳しい冷え込みで吹雪にも見舞われる中、2人の遺体が見つかり、50時間以上に及ぶ捜索活動が終わった。
(早坂直樹、中田隆徳、常陰亮佑、柏このか)
土砂崩れの現場から見つかった男女2人の遺体の身元はまだ判明していないが、行方不明となっている女性の妹(74)は、「見つかってよかった。考えるほど心配で、かわいそうで、ずっと寝られなかった」と声を震わせ、顔を覆ってうずくまった。
女性は4人姉妹の長女で、妹にとって、よく話を聞いてくれる、明るく元気な姉だ。月に1回ほど、鶴岡市内に住む別の妹と一緒に被災した家を訪れていたという。
昨年12月中旬には、同じ日に新型コロナウイルスのワクチンを接種したので、様子を気にかけて電話をかけた。その際、体調を尋ねると、「今回は何でもないっけー」と明るく話していたことが、昨日のことのように思い出される。
妹は「この天候の中捜索を続けてくれ、感謝している」と話した。
行方不明となっている夫婦と交流があった近隣住民は、2人への思いを語った。
この地区の元自治会長の平田充広さん(75)は、夫婦と野菜などをお裾分けし合う仲だったといい、「奥さんは気さくな人で、3年ほど前、除雪中にもらったグレーの手編みの手袋は今でも大切にしている。旦那さんは散歩中に会うと、世間話をする明るい人だった」と語る。
また、自治会長の安倍長一さん(67)は、「無事に見つかってほしいと思っているが、もし発見されたのが2人であれば残念でならない」と肩を落とした。