2023年最初の稿なので、今年前半、岸田文雄政権がどうなるかを展望してみたい。結論を先に言えば、引き続き「綱渡りの政権運営」を強いられるものの、少なくとも6月までの退陣はないというのが筆者の見立てである。
前半、最大の関門は、通常国会の予算審議である。昨年の補正予算で29兆円規模の経済対策を打ったものの、依然として、わが国経済を取り巻く状況は厳しい。
「アベノミクス」でも克服できなかったデフレに加え、ロシアのウクライナ侵略などによる資源高、物価高が重くのしかかる。
23年度予算案に盛り込まれた経済政策が十分かどうか、厳しい論戦が交わされることになるだろう。また、予算は「防衛力強化」の初年度となる。昨年末閣議決定した「安保3文書」に記載された「反撃能力」や防衛費の財源問題など、これに反対する立憲民主党や共産党などは激しく政府を攻撃するだろう。
何といっても、これまでの安保政策の歴史的大転換である。政府答弁の難易度はこれまでになく高い。もし、答弁ミスが発生すれば、たちまち立ち往生となる。
加えて、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題や、大臣の不祥事も引き続き追及材料だ。まさに難問山積である。
果たして、これらを乗り越えて23年度予算の年度内成立を果たせるかどうか。もし、昨年の臨時国会のような不手際が続くと、岸田首相の「不人気」が原因で、統一地方選の自民党候補に悪影響が出かねない。
さらに4月下旬には衆院補選がある。ここで自民党候補が敗れることになれば、一気に「岸田退陣論」が現実味を帯びてくる。
しかし、こうした事態になったとしても、退陣に向けて政局が動くのは統一地方選や衆院補選が終わる4月下旬だ。また、5月には広島でG7(先進7カ国)首脳会議があることから、その直前の退陣は考えにくい。
結局、退陣表明が行われるのは6月中旬の通常国会の会期末近くになってからだろう。その後、自民党総裁選が行われ、実際に政権が変わるのは7月末か8月になるのではないか。
以上が「6月までの退陣はない」と考える理由である。
逆に、予算が順調に成立し、統一地方選、衆院補選もそこそこの結果を残すことができれば、岸田政権は昨年来の窮地を脱したかたちとなる。そこから先は、秋に向けた新たな政局が始まることになる。
もちろん、大災害や安全保障上の事件、あるいは岸田首相自身の健康問題やスキャンダルなどが発生すれば話は別である。政界は「一寸先は闇」と言われる。何が起こるか分からない。
「ニュース裏表」との本コラム名の通り、今年もニュースを多角的に考える視点を提供できるよう努力していきたい。 (政治評論家・伊藤達美)