大阪湾のクジラ 専門家「衰弱して群れからはぐれた可能性」

大阪湾の淀川河口付近に姿を見せたクジラは、出現から丸1日たった10日も湾内にとどまる様子が確認された。大阪海上保安監部によると前日よりも動きが少なく、船舶に衝突しないよう警戒を続けている。専門家によると背びれの形状などからマッコウクジラとみられ、生きた状態で大阪湾で目撃されるのは非常に珍しく、衰弱して群れからはぐれた可能性があるという。
一般財団法人「日本鯨類研究所」(東京都)の資源管理部門長、田村力さん(54)によると、マッコウクジラは北極から南極まで幅広く生息し、日本周辺では太平洋側で目撃されることが多く、西日本では紀伊半島沖や高知県沖などを回遊。雄は体長約15メートル、雌は約11メートルに成長し、水深1000メートル以上の深海に生息するイカや魚を主食にしている。今回は体長約8メートルで、若い個体か雌の可能性があるという。田村さんは「若い個体や雌は群れで行動することが多い。衰弱して群れからはぐれたのではないか」と分析する。
大阪湾の生物に詳しい大阪市立自然史博物館外来研究員の鍋島靖信さん(69)によると、大阪湾の水深は30メートルほどの場所が多く、深海で餌を捕食するマッコウクジラが入ってくることは通常考えられないという。「満潮になると太平洋側から大阪湾の方に潮が流れるので、今回のクジラは泳ぐ力が弱まって流された可能性がある」と指摘する。
水産庁によると、クジラが打ち上げられた場合、生死を問わず発見場所の自治体が救出や処理をする対応マニュアルがあり、過去には死骸を砂浜に埋めて骨の状態にし、希望する博物館や研究機関に引き渡した事例もある。しかし、今回のように生きたまま湾内に入り込んだケースはマニュアルに記載がなく、水産庁の担当者は「クジラは大きいので、動いている状態だと船に尾などが当たって事故につながる危険がある。現状では見守るしかない」と話している。大阪市は専門家の意見を踏まえ、今後の対応を検討する方針。
海の生き物が都会の川などに迷い込んで、話題になったことは過去にもあった。2002年には多摩川でアゴヒゲアザラシ「タマちゃん」が人気に。11年にも埼玉県志木市の荒川にゴマフアザラシが出没し「志木あらちゃん」として愛された。いずれも住民票を交付されるなど異例のブームとなった。
今回、大阪湾の淀川河口に現れたクジラもSNS(ネット交流サービス)で早速「淀ちゃん」と名付けられ、応援されている。【川畑さおり、山田毅】