鳥インフル猛威、殺処分1000万羽超 卵も肉も価格上昇…市民生活に影

各地で猛威を振るう高病原性鳥インフルエンザ。昨年10月に北海道と岡山県の養鶏場で確認されて以降、23道県に広がり、殺処分の対象は過去最多の1千万羽を超えた。国は全国で緊急消毒に乗り出しているが、収束の見通しは立たず、価格の安定感から「物価の優等生」と呼ばれる鶏卵も約30年ぶりの高値に。国際的な飼料価格の高騰による鶏肉の値上がりと相まって年明けの家計を圧迫している。
感染爆発「前例のない異常事態」
「非常事態宣言ともいうべきことを発したい」。野村哲郎農林水産相は9日、省内で開かれた対策本部の会合でこう語り、農家や自治体に「最大限の緊急警戒」を呼びかけた。
鳥インフルはウイルスを保有した渡り鳥がシベリアから南下することで広まる。国内では主に10月から翌春にかけて発生するが、今季は過去最も早い9月下旬に1例目が野鳥から確認された。10月下旬には、北海道と岡山県で養鶏場での陽性が判明した。
今月10日時点で野鳥の感染例は過去最多の143件。野鳥を介して養鶏場に感染が広がり、これまで感染例がなかった山形や福島など6県でも報告されるなど「前例のない異常事態」(環境省)となっている。
農水省も昨年12月から全国の養鶏場の緊急消毒などを進めているが、収束の目途は立っていない。
「これまで感染は一部のカモ類にとどまっていたが、近年はより幅広い個体群に感染が拡大しているようだ」
猛威を振るう理由について、鳥インフルに詳しい鹿児島大の小沢真准教授(ウイルス学)はこう解説する。鹿児島県出水市では今季、ツルの大量死が確認されており、多数の死骸からウイルスが検出された。小沢氏はウイルスの遺伝子変異が起きているとの見方を示した上で、「従来はカモからツルに感染するのが主流だったが、今年はツルからツルへの感染も目立ち、感染爆発が起きているのが特徴だ」と話す。
家計にダブルパンチ
感染の拡大は家計を直撃する。殺処分の大半は採卵鶏で、全国で飼育される約1億3700万羽の7%を超えた。殺処分に伴い、鶏卵価格が上昇。JA全農たまごによると、卸売価格は昨年12月平均で1キロあたり284円(東京、Mサイズ)と、価格を公表した平成5年以降の最高値を更新した。ロシアのウクライナ侵攻により世界的に飼料価格が高騰。そこに鳥インフル禍が加わり、家計にとって〝ダブルパンチ〟の状況となっている。
不測の事態に、鶏卵業界は通例は1年半ほどで引退させる採卵鶏の産卵を継続し、在庫調整などで余った卵も市場に回すなどの対策を実施。卸価格の上昇が平年比140%となっているのに対し、小売価格の平年比は108%と緩やかな上昇に抑えているという。
一方、鶏肉の値上がりも目立つ。農水省によると、国産のもも肉の卸売価格(東京)は今月7日時点で1キロあたり816円。前年同期から153円も上がった。むね肉も同433円で、前年同期比88円増。ともにこの10年ほどで最高価格になっているという。
「近年は健康志向の高まりで世界的に鶏肉需要が高まっている。輸入肉の価格が上がり、国産の需要を押し上げている。国内のブロイラーの飼育は多くを輸入飼料に頼っているため、飼料価格の高騰による影響も大きい」と農水省の担当者。現在のところ、鳥インフルの影響は鶏卵が中心で鶏肉への影響は限定的だが、「食用の鶏にも感染が広がれば、さらなる値上がりもあり得る」(同省)。
すでにマヨネーズなどに使われる加工用の卵の不足が報告されており、農水省では「このまま感染が広がれば、卵の緊急輸入も考えなければならない」との声も出ている。(白岩賢太、大竹直樹)