2歳熱中症死 富田林市「けが8回」把握も評価見直さず 大阪府検証

大阪府富田林市で2022年6月、2歳女児が自宅に放置されて熱中症で死亡した事件で、同居する祖母(46)=保護責任者遺棄致死罪などで起訴=が事件の2カ月前から、育児の疲れや不安を市に訴えていたことが判明した。市は女児のけが情報も計8回把握したが、虐待リスクを巡る評価の見直しを検討していなかった。府の検証専門部会は20日に公表した報告書で、市の判断の甘さや児童相談所の支援不足を指摘した。
亡くなったのは小野優陽(ゆうは)ちゃんで、父親の家庭内暴力に伴って20年1月に祖母に引き取られた。事件では、祖母の小野真由美被告と内縁の夫の桃田貴徳被告(51)=同=が大阪府警に逮捕された。
両被告は事件の5日前、優陽ちゃんを四方に板が張られたベビーサークルに入れたうえで、五男(6)と計3人で外出。外泊と一時帰宅を繰り返し、直前には優陽ちゃんの腕や足を縛ったうえで大阪市此花区の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)で遊んでいたとされる。富田林市の最高気温は連日30度超で、優陽ちゃんは6月29日に熱中症で死亡した。
報告書によると、市は20年10月、優陽ちゃんの対応を大阪府富田林子ども家庭センター(児童相談所)から引き継いだ。真由美被告は22年4月に計2回、優陽ちゃんの発育状況や育児の疲れについて市の担当者に相談。「精神的にしんどい。(育児の)負担が大きく、施設への入所も検討している」と打ち明けていた。
また、市は優陽ちゃんの対応を始めて以降に計8回、顔や体のあざなどに関する情報を確認していたことも明らかになった。真由美被告は「自宅の机で打った」などと話したが、説明できない傷もあった。優陽ちゃんは体重などの成長も遅れていたという。
市はこの間に真由美被告が保育園を退園させたことも把握したが、優陽ちゃんの虐待リスクについて、一時保護も検討する「要保護児童」から見守り中心の「要支援児童」に引き下げたことが分かっている。真由美被告への接触は役所での面談が中心だった。
報告書は、市が児相から対応を引き継いだ後に一度も家庭訪問を実施していないことを問題視したうえで、真由美被告の言動を踏まえて「緊急性の評価が必要だった」と指摘。市は児相と危険度や緊急度を協議する会議を開催し、児童養護施設への入所も含めた支援計画の見直しを検討すべきだったと強調した。
一方、児相が対応していた当時、優陽ちゃんの虐待リスクは最も深刻な「最重度」と認定された経緯もある。報告書は児相について、市への積極的な指導や助言が必要だったと注文をつけた。【郡悠介、洪香】
検証部会長、市と児相の一連の対応批判
有識者らが参加した検証専門部会で部会長を務めた才村純・東京通信大名誉教授(児童福祉論)は大阪府庁で記者会見し、富田林市や児相の一連の対応について「(虐待リスク評価の)頻度や内容が不十分。詰めが甘い」と批判した。
児相は両親の年齢などの家庭状況を踏まえ、優陽ちゃんを生まれた時から「要保護児童」として対応を始めた。優陽ちゃんは生後11カ月だった2020年6月、真由美被告宅で入浴中に溺れて一時的に心肺停止状態になったことがある。
搬送先の病院から通告を受けた児相は、一緒にいた真由美被告の育児放棄を疑い、虐待リスクで最も深刻な「最重度」とした。その後、真由美被告とのやり取りなどから育児放棄の兆候はうかがえないと判断し、富田林市に対応を引き継いだ。市は児相との協議を踏まえてリスクを「中度」に変更。最終的には要保護から要支援まで引き下げた。
しかし、市は計8回、優陽ちゃんのけがに関する情報を把握していたことが明らかになった。経緯が不明なけががあったほか、うち3回はのあざが確認された。
厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」は行政側に対し、受傷の経緯が分からないけがは虐待のリスクが高いと規定。特に乳幼児の頭部や顔面のけがは身体的な虐待の可能性が高いとし、早期の情報収集や保護の必要性を呼び掛ける。
真由美被告は事件直前に優陽ちゃんへの育児不安も漏らすようになっていたが、市は家庭訪問を一度も実施せず、リスク評価の見直しも検討していなかった。
才村名誉教授は家庭訪問は不可欠だったと強調したうえで、「行政はさまざまな機会を捉え、養育者のしんどさに寄り添わないといけない。(被告に)もう少し密に接触していれば、きめ細かい対応ができたのではないか」と訴えた。
一方、富田林市の吉村善美市長も市役所で記者会見し、リスク評価や対応の甘さを指摘されたことについて「関係機関が丁寧に関わる必要があったと反省している」と陳謝した。市では事件後、担当職員の増員や研修の実施など再発防止に向けた取り組みを進めている。【洪香、榊原愛実】