事件前に感じた異変…金の無心も 被害者の弟「悔しい」

堺市中区の集合住宅の一室で昨年11月、無職の唐田健也(たつや)さん=当時(63)=の遺体が発見された。大阪府警は26日、殺人容疑で、楠本大樹容疑者(33)を逮捕した。
「生きていたら、いいこともあっただろうに」。亡くなった唐田健也さんの弟(62)は産経新聞の取材に悔しい思いを吐露し、「兄がなぜ死ななくてはならなかったのかを明らかにしてほしい」と訴えた。
兄弟は熊本県天草市の出身。中学生のころ家族で大阪府貝塚市に移り住んだ。唐田さんは高校卒業後、調理師として10年働き、その後は兄弟で同じ会社で勤務。両親が病死してからは「2人で苦労してきた」。だが約10年前に唐田さんがその会社を辞め、連絡は途絶えがちになっていたという。
昨年10月、久々に兄から電話がかかってきた。「レンタカー代を返さないといけないから、1万円くれないか」。車を運転しない兄がなぜ、と疑問に思いながら現金を渡すと、それ以降、3日に1度のペースで金を求める電話がかかってくるようになった。後ろから、兄に指示を出す男の声が聞こえていた。「今思えば楠本大樹容疑者だったのだろう」
堺市中区役所から兄が死亡したと連絡があったのは、それからまもなく。遺体をみたときは泣き崩れた。「顔はきれいだったが殴られた痕が残っていた。見たくなかった、兄貴のそんな姿」。もう会えなくなるとは思っていなかった。
死亡後、中区役所で楠本容疑者から、「生前に唐田さんに貸した約12万円を代わりに返済しろ」とすごまれた。ただ、唐田さんが楠本容疑者に金を借りていた記録は確認できなかった。兄はなぜ殺されなければならなかったのか。「犯人が捕まってほっとした部分もあるが、事件の全容を明らかにしてほしい」と願う。