各地で相次ぐ強盗の指示役「ルフィ」は、かつてフィリピンを拠点にしていた特殊詐欺グループの指示役だった可能性が浮上した。現地の入管施設に拘束されているのが判明したのは、日本人の男4人。警察当局は身柄の送還を受け次第、一連の強盗事件の解明を進める。
捜査関係者によると、4人は過去に特殊詐欺に関与したとして窃盗容疑などで逮捕状が出ている渡辺優樹、今村磨人両容疑者ら。フィリピン当局が2019年11月に日本人の男36人を摘発した特殊詐欺事件の指示役だったという。このうち渡辺容疑者がルフィとみられている。
19年当時、4人は首都マニラの近郊・マカティ市にある廃ホテルなどを拠点に、警察官や財務局職員を装って日本の高齢者に電話をかける「かけ子」らを仕切っていたとされる。
配下の36人は現地当局に拘束されて送還後、警視庁に逮捕された。ツイッターの「闇バイト」の募集に応じるなどしてグループに加わっていたが、中には詐欺と知らされず、「電話対応の仕事」などと説明されてフィリピンに渡った容疑者もいたという。
公判の記録などによると、4人のうち渡辺容疑者が最も上位で、「ボス」と呼ばれていた。配下の幹部らが末端メンバーの体をベルトで打ち付けたり、割れたビール瓶の破片で刺したりしてグループを支配していたという。
「ルフィ」は人気漫画の主人公の名前をまねている可能性がある。昨年以降起きた一連の強盗事件のうち、関与が疑われているのは少なくとも8都県の14件。一部の事件では、ほかに「キム」や「ミツハシ」と名乗る指示役の存在も明らかになっている。同一人物が名前を使い分けている可能性もある。
ルフィらは、メッセージを自動的に消去できる通信アプリ「テレグラム」で指示を出し、実行役には「逮捕されたら黙秘するように」と迫っていた。
実行役のメンバーはSNSの闇バイトで集められ、応募する時に顔写真や運転免許証などの個人情報を送信するよう求められていた。逮捕後の調べに対し、「話せばルフィに粛清される」と供述を拒む容疑者もいるという。
昨年11月に山口県岩国市の住宅で起きた強盗未遂事件では、実行役の男(25)のスマートフォンに事件前、テレグラムでルフィから「岩国に金を持った人がいる」とのメッセージが送られていた。男の知人が別の事件で逮捕された際には、「大変ですね」とのメッセージが届いたという。
警察当局は、特殊詐欺グループの摘発後、それぞれ現地当局に拘束された渡辺容疑者らが、収容施設に身を置きながら手口を強盗に移行して実行役を操っていたとみている。