ルフィ収容施設は「金がモノを言う世界」…賄賂でVIPルーム・複数スマホ・ゴルフ外出

【マニラ=小峰翔、水野哲也】関東など各地で相次いだ強盗事件で、指示役「ルフィ」は、フィリピンの入管施設に収容されながら、日本にいる実行役に強盗を指示していた疑いが浮上している。いったいどのような施設なのか。
首都マニラの大統領府から南東に約13キロ。フィリピン入管当局の「ビクタン収容所」は、不法滞在などで強制退去が見込まれる外国人らを収容する施設だ。
脱走を防ぐため高さ約4メートルの壁に囲まれ、有刺鉄線が張り巡らされている。この中に、渡辺優樹、今村磨人両容疑者ら日本人の男4人(別の特殊詐欺に関与した窃盗容疑などで逮捕状)が収容されている。
コロナ禍前まで約7年間施設に出入りしていたフィリピン人女性と、知人が収容されているという現地の女性は読売新聞の取材に「お金がモノを言う世界」と口をそろえる。
2人によると、収容者は日本人、中国人、韓国人、米国人が多い。定員約140人に対し、常時3~4倍の人数がおり、エアコンがない共用スペースで雑魚寝を強いられるなど環境は劣悪だ。
だが、職員への賄賂が横行しており、5万~7万ペソ(約11万~16万円)を渡せばエアコン付きの部屋を使用できる。専用シャワー付きの「VIPルーム」と呼ばれる1人部屋もある。
通信機器の使用は本来禁止されているが、職員に数万円から十数万円を払うとスマートフォンを使用できる。没収されたスマホが返却されたり、別の収容者から新たに購入したりすることも可能。複数のスマホを持つ人もおり、スマホでオンラインカジノに興じるグループもいたという。
食事代の2割~2倍を職員に支払えば、配達サービスも利用できる。たばこは日本の銘柄が人気で、1本100ペソで売り買いされている。酒や薬物に浸る人もおり、知人を連れ込んだり、外出してゴルフをしたりする人もいたという。

「ルフィ」ら強盗グループの指示役は、施設内から秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を使い、日本の実行役に強盗を命じていた可能性がある。フィリピン人女性は「収容者が施設内から日本に犯罪を指示していたとしても、驚きはない」と語った。
同国のヘスス・レムリヤ法相は、渡辺容疑者らに協力した可能性がある職員を調査する方針を表明しているが、女性は「施設の幹部も不正に関与している可能性があり、茶番ではないか」との見方を示した。
警視庁はこれまで4人の身柄の引き渡しを求めてきたが、フィリピン側は同国内の別事件に関与した疑いがあるなどとして応じてこなかった。収容所では、自国に強制送還されると重罰が見込まれる収容者が、現地の協力者に虚偽の告訴をさせて「容疑者」となり、送還を先送りさせる手法が横行しているという。