2022年9月の台風15号への静岡市の行政対応をめぐり、市は1月31日に発表した中間報告で、田辺市長の災害後の行動について「検証しない」意向を示した。これに対し田辺市長は1日、「個人と組織は切り離すべき」と述べた。
2022年9月、県内を襲った台風15号の記録的大雨により、静岡市では大規模な浸水被害や断水が起き多くの市民に影響が出た。市民からは、静岡市に対し、「初動の遅れ」などについて批判の声が上がり、市は行政対応を見つめ直すため検証を進め、1月31日に中間報告を発表。今回の災害対応について11項目に分けて検証し、「原因」や「改善策」などを示した。
中間報告では、いわゆる“初動が遅れた”原因について、「関係機関や市民からの問い合わせなどの電話対応に忙殺されていた」などと分析した。
一方、報道陣から指摘が相次いだのは、当時の田辺市長の行動について…。田辺市長は、清水区で大規模な断水が発生する中、“公務”として予定通り敬老会や祭りなどに出席していたが、市はこうした市長の行動は検証項目に入れず、改めてヒアリングする予定もないと話した。これに対し、市民からは…。
(清水区民)
「田辺市長の行動もしっかりと検証も必要だと思う」
(清水区民)
「結果論なのでいまさらというのもあるし、いろいろ事情もあったと思うが、市長は最高の意思決定者なので、責任は問われると思うが」
田辺市長は1日、自身の行動について「いまでも自問自答している」としたが、改めて検証する必要はないとの考えを示した。
(静岡市 田辺市長)
「あれが適切な行動だったかどうか、私自身、いまでも自問自答している」
Q)自問自答の部分についてしっかり検証することが必要なのでは?
(静岡市 田辺市長)
「私の最終的な責任、政治的な責任、道義的な責任は負う。行政の各所、どこが足りなかったのかを検証するということが大事、これは切り離されるべき。(私の行動は)報告書に記載されるべき内容ではないというのが私の考え」
一方、災害直後からボランティアで現地に出向き、住む場所が無くなるなど、被災した市民に寄り添い、さまざまな相談に対応してきた永野海弁護士に、この中間報告について聞くと…。
(永野 海 弁護士)
「“被災者支援”という項目を見たときに、災害救助法に基づく支援というタイトルになっていて、救助法の支援がつつがなくできたかを検証しているが、実は災害救助法というのは、手段の一つ。本来、目を向けるべきは、やはり人間。情報をとるにしても人間から情報をとって、何が困っているのだろう。行政は市民のために何ができるだろう。それが実施できたのかという検証をすべての項目に渡ってしていただきたいが、そこが心配になった点」
永野弁護士は、磐田市では雨が止んだ3日後に独自の制度を整え、市民に住宅の提供を始めたことを例にあげ、静岡市の中間報告の問題点を指摘する。
(永野 海 弁護士)
「(磐田市が)なぜそれができるかと言うと、行政というのは市民の安全、安心、被災後の再建のためにあると目的がしっかりとしている。果たして静岡市はそういう視点を持てていたのか、そこをむしろ検証してほしい」
静岡市の最終報告は3月末にまとめられる予定だが、次の災害に生かされるものになるのか?永野弁護士の意見は…。
(永野 海 弁護士)
「ハード面とか法律のつつがない適用ばかりがフォーカスされて魂の抜けたような分析にならないか。一番、大きな問題だったと感じるのは、一番重要な時に避難所がなかったこと。市民は今日・明日、生きることができるのかという所で苦しんでいた、その時に最も安全に過ごせる場所であるはずの避難所がなかった。閉鎖されていた、なぜそんなことが起きたのか、これは全精力を結集して分析しないとダメ。僕はその原因は自分たちが主体的に今、何が起きているのかという被害の情報をとりにいかなかったこと。市民の声を十分に聞ける体制になかったことだと思う」