東京五輪汚職 AOKI前会長に懲役2年6月求刑 地検「私利私欲」

東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事の高橋治之被告(78)=受託収賄罪で起訴=にスポンサー選定を巡って計2800万円の賄賂を渡したとして、贈賄罪に問われた横浜市の紳士服大手「AOKIホールディングス(HD)」前会長の青木拡憲(ひろのり)被告(84)に対し、東京地検は1日、東京地裁(安永健次裁判長)で開かれた論告公判で懲役2年6月を求刑した。地検は「私利私欲のために大会を利用し、大会が生み出した価値を踏みにじった」と指摘した。
これに対して弁護側は、同社がスポンサーになることは元理事からの提案で、元理事にはスポンサー料(協賛金)の一部を私的に得ようという考えがあったと主張。支払った金額の一部は実際に元理事に渡ったとし、こうした事情を考慮して執行猶予付きの判決とするよう求めた。この日で結審し、判決は4月21日。
検察側は論告で、青木前会長は2017年1月、元理事から本来の協賛金の半額程度の7億5000万円でスポンサーになれると提案を受けたと指摘。同年10月~22年3月に計5100万円を元理事に支払い、その間に日本選手団の公式制服を優先して製作・販売できる権利やスポンサー契約の早期締結などを元理事に依頼したとした。
一方、弁護側は最終弁論で、協賛金7億5000万円の支払先は、元理事から「組織委に5億円、競技団体に強化費として2億5000万円」と求められたと説明。実際に競技団体に支払った2億5000万円のうち1億数千万円は元理事側が取得したとし、「元理事は当初から私的な利益を得るつもりでスポンサーを持ちかけてきた」と訴えた。
青木前会長は最終意見陳述で「深く反省しています。申し訳ありませんでした」と謝罪した。検察側はともに贈賄罪に問われた前会長の弟で前副会長の青木宝久(たかひさ)被告(77)には懲役1年6月、元専務執行役員の上田雄久(かつひさ)被告(41)には懲役1年を求刑した。【志村一也】